2024年 4月 26日 (金)

コンビニ深夜営業「自粛」要請 「防犯拠点にもなる」と業界大反発

   二酸化炭素(CO2)の削減や地球環境の保護を理由に、コンビニエンスストアの深夜営業の見直しを求める声が強まり、京都市や埼玉県が自粛を求めていく方針を固めた。神奈川県も松沢成文知事が「検討したい」と話した。自治体のこうした動きに鴨下一郎環境相も「歓迎すべきこと」と後押し。自治体による深夜営業「規制」に勢いがつきそうだ。

「条例で規制はキツすぎる気もする」

   京都市は現在、国の「環境モデル都市」に立候補している。地球温暖化対策で先行する、文字どおりのモデル都市をめざして、市民を巻き込んでの「市民会議」を設けて具体策を練っていた。コンビニの深夜営業規制は、その中のひとつとして取り上げられた。

   市の地球温暖化対策室は、「温暖化進展の原因に、夜型生活があると考えている。コンビニや外食産業の24時間営業もそうだが、一方で便利さや防犯上の安心さのメリットをあげる声もある。総合的なあり方を模索したい」と話している。コンビニが「悪い」ということではないが、エネルギー問題のほかにも市民の健康や子どもの教育の問題など、市民のくらしの視点から深夜営業を考えたいという。

   埼玉県は「ストップ温暖化埼玉ナビゲーション2050」の素案づくりのなかで、コンビニの深夜営業の見直しが持ち上がった。2008年6月16日にも、素案を議論する地球温暖化対策の検討に関する専門委員会が第2回会合を開き、「(深夜営業の見直しは)温暖化防止のために、いまからやらなくてはならないレベルにきている」ことを確認した。ただ、具体的な検討はこれから。県レベルでの規制となると周囲へのインパクトが大きいが、温暖化対策課は「需要があるところまで削減するよう求めるわけではありません。段階的に進めていき、(コンビニと)折り合える点をみつけられると考えています」と話す。

   6月17日には神奈川県の松沢成文知事が、コンビニなどに24時間営業の見直しを求める方向で検討していることを明らかにした。年度内の制定をめざしている「地球温暖化対策推進条例」(仮称)づくりのたたき台となる検討委員会の最終報告に、「事業者に環境負荷の軽減を求める」内容が盛り込まれるので、「これに基づいて、さらに意見を聞きながら検討していく」(環境計画課)という。

   ただ、コンビニに強制的に閉めろとは言えないし、かといって委ねてしまえば形骸化しかねない。条例で深夜営業の規制するという方法があるが、「利用者利便を考えても、条例ではキツすぎる気もする」(埼玉県)と、落としどころには頭を痛めそうだ。

深夜営業やめると売上げ約20%減

   ところで、コンビニが深夜営業をやめると、どのくらいのCO2が削減できるのだろうか。J-CASTニュース日本フランチャイズチェーン協会(JFA)に聞いたところ、「夜間でも冷蔵庫などは動いており、看板や店内照明の消灯による削減効果は5、6%。配送車両を昼間動かすと交通渋滞や車両台数の増加が見込まれ、商品搬送は2%ほど増えてしまう。差し引き4%の効果しかない」と説明する。

   セブン&アイ・ホールディングスも「CO2の削減については、冷蔵庫や空調関係などを新しい省エネタイプのものに取り替えることでも対応している。できることからやっている」と話す。

   一方、JFAの試算では深夜営業をやめることで売上げは約20%も落ちる。「経済と環境」のバランスを考えると、深夜営業の取りやめはコンビニにとって簡単ではない。

   さらに最近は、深夜営業のメリットに「防犯拠点」としての役割をあげており、JFAによると、年間約1万3000件もの女性の駆け込みがあり、そのうちのほぼ半数が深夜帯だった。「コンビニのおかげで安心して帰宅できるという、利用者の声は少なくない」(セブン&アイHD)と、「温暖化防止」という一方的な視点からの議論を牽制する。

   全国のコンビニは4万2246店(JFA加盟12社ベース、08年2月末時点)で、このうち深夜(24時間)営業は3万9878店、じつに94.4%に上る。夜型生活がCO2排出量を増やしているというのであれば、「テレビやインターネットが与えている影響のほうが大きい。深夜に働いている人もいて、便利に使ってもらっているのに、深夜営業が環境に悪いとは心外だ」と、あるコンビニ関係者は不満をあらわにする。

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