2024年 4月 24日 (水)

二刀流大谷、「投手」デビューで合格点 新時代のスーパースターへ歩みだす

   二刀流の大谷翔平がもうひとつの刀を抜いた。2013年5月23日、投手としてデビュー。最高157km/hの速球を投げ、大器の片鱗を示した。ファンに大きな夢を与える「21世紀型スーパースター」に期待がかかる。

86球のうち、42球で150km/hオーバー

   札幌ドームの開場前に6000人以上のファンが長い列を作った。むろん、試合開始のときには、スタンドは超満員(3万6608人)。そんな中で大谷は初めてマウンドに立った。待ちに待った投手デビューである。相手はしぶといヤクルト。

   注目の第1球は、外角低めのストレート。判定は「ボール」だったが、いきなり152km/hを出した。1回を10球で抑えた。すべてストレートというから驚く。もっとも球場全体が興奮したのは、3回にバレンティンに対したとき。この日、最速の157km/hをマークして三振に、2回と合わせ2年連続ホームラン王を2三振と力でねじ伏せた。

「投げていて楽しかった。いい球も悪い球もあったけれど、力強く投げた球が狙ったところへ行った」

   こう振り返った大谷の投球内容は、5イニングで安打6、奪三振2、四球3、失点2。先発としては上出来である。球数は86。ストレートは65球で、うち150km/hを超えたのは42、実に3分の2だった。

   してやったり、と栗山監督は語る。「打者のときとは顔つきが違った。やっつけてやる、といった表情だった」と。打者と投手の二刀流は、栗山と大谷の、いわば合作だから、監督としてはひと安心といったところだろう。

   この日のデビューは予告先発。緊張した様子はほとんど見られなかった。打者として出場してきたことが大きかったと思う。

   捕手の鶴岡は「ストレートとスライダーは通用する」と手応えをつかんだ。相手のヤクルト勢も絶賛した。「本格的に投手の練習をしていなかったとすれば、1年目とは思えない」とは2000安打を積み重ねた宮本。最大級の評価をしたのは元大リーガーの岩村で「ストレートはメジャーの速球派に匹敵する」

   レンジャースの関係者も見に来た。いわく「印象に残る投手だ」――。

   どうしても知りたいのは同じルーキーの阪神藤浪との比較だ。宮本が見事に違いを説明する。「藤浪は手元で動く汚い(手強い)球。大谷はスピンがかかったきれいな球」と。

   大谷が藤浪にライバル意識を持っていることは事実。ただ現実は分かっていて「藤浪は甲子園の優勝投手。僕は甲子園では1勝もしていない」と素直だ。その差を努力で埋めていこうという意識を持っている。

   だれもが合格点を付けた。しかし、このまま通用するほどプロは甘くない。それは大谷も自覚しており「走者が出てからの投球、細かいコントロールを勉強したい」と自らデビュー戦で課題を見つけた。

   すでに打者として打率3割を超えている。投球も含めて野球界は大谷の素質を再認識したはずである。二刀流のスター。これまでにない二刀流の「21世型スーパースター」への期待が膨らむというものである。日本球界はいい素材に恵まれた。米球界に取られなくて良かったとつくづく思う。

(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)

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