時代劇の世界では、公正で人情味のある「大岡裁き」があるが、これをいま実現しようと思うと、なかなか難しいものがある。ある会社の担当者は「部下思いの部長の気持ちも分かるが、会社のルールは守ってもらわないと」と頭を悩ましている。
――小売業の人事担当です。先日、病気休職中の部下を持つ部長から「折り入ってお願いがある」と連絡がありました。休職期間の満了によって退職が近づいている部下について、「何とか退職させなくて済む方法はないか」という相談でした。
この部下は、もともと体調不良で休みがちだったのですが、有給休暇や特別休暇を使って、しばらく休職せずにいました。しかし、いよいよ「双極性障害(躁鬱病)で休職を要する」という診断書が出て、人事にも連絡が来ていました。
以前は、この熱血部長の指導の下で優秀な成績をあげていたのですが、過労が原因で発症してしまったようです。そこで休職の措置を取りましたが、何度か復職と休職を繰り返して末に、期間満了になってしまったわけです。
この部長は人情に厚い人で、家庭訪問をして部下の状況を熟知しているせいか、
「うつのときは働けないけど、躁のときは結構成果を上げられるんだ。妻子もいるし、なんとか雇用を継続する方法はないのか? 自分の部署で面倒を見るから・・・」と訴えてきます。確かに出社してきたときは、他の社員以上の仕事をこなすことができますが、不調のときとのギャップが大きいようです。
また、この部下が休職と復職を繰り返している間、賞与などに大きな影響がでないように、部長が人事評価を甘く見積もっているようです。
幸いこのご時勢でも、ただちに解雇しなくても済む余裕はあるのですが、周囲とのバランスを考えると、部長の依頼をどう受けたらよいのか、組織ルールを逸脱した人事評価を放置していて良いのかと頭を悩ませる日々です――
(続く)
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