2024年 4月 26日 (金)

病気休職者が「資格試験」の勉強を熱心にしています!

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   休職中の社員が元気になってきたこと自体は、とても喜ばしいことだ。しかし、あまりに元気すぎて「本当に病気なの?」という状態であれば、協力している同僚も穏やかではない。ある会社の休職者は、社員寮で難関の「公認会計士」の試験勉強をしているらしい。

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「いやー、いま佳境でさ。毎日大変だよ」

――総合商社の人事担当です。入社3年目の男性社員のA君は、半年ほど前に「うつ病」と診断され、現在病気休職中です。A君は会社の寮に入っているのですが、寮の管理人と話をした際に、彼についての話を聞きました。

「休職中と聞いていますけど、元気そうですよ。食欲も普通にあるようだし、外出もしています」
   寮に入っている同期に確認したところ、どうやらA君はいま、公認会計士の資格取得を目指して熱心に勉強しているようです。資格の学校にも週に3日ほど通っているとのこと。廊下ですれ違った時に「体調大丈夫か?」と声をかけたら、

「いやー、いま勉強が佳境でさ。毎日大変だよ。体調は良くなってきた」
と笑っていたそうです。休職期間はあと半年間残っていますが、いま考えると長すぎるし、公認会計士試験のタイミングを見越した計画的なものだったような気がしてきました。

   本当に病気かどうかも分からないような社員に対して、会社はどう対処したらいいのでしょうか? 担当業務とは言え、社員のことを考えていろいろ対応しているのが空しくなります――

社会保険労務士・野崎大輔の視点
「詐病」の疑いも。慎重な対応でトラブル回避

   病気休職の場合、無給であれば健康保険から「傷病手当金」として1日につき、標準報酬日額の3分の2に相当する額が支給されます。一方、私的な資格取得のために休職するには、一般的に社内審査を経て許可が必要であり、金銭的な支給もありません。したがって、資格の学校に週3日も通えるのに病気を理由に休職している今回のケースは、「詐病」(病気であるかのようにいつわる詐偽行為)と疑われます。もしそうであれば、懲戒処分の対象となるでしょう。

   ただ、通院歴も診断書もあるのに、いきなり「君は詐病だな」と通告するようなやり方は、大きなトラブルを招きかねません。「病状が悪化したのは会社のせいだ!」と言われるおそれもあります。休職者とは常日頃から連絡を取り、定期的に面談をして日々の生活状況や体調を報告させ、記録を残しておくことが必要です。面談に産業医に同席してもらって意見を聞いたり、主治医と連絡を取って治療の見通しを聞くことも有効です。

臨床心理士・尾崎健一の視点
主治医と情報を共有して「正しい対応パターン」を選ぶ

   企業の担当者は適切な対応を行うために、休職者および主治医とともに「通学等がもたらす治療への影響」や「職場復帰の可能性」について、いま一度確認する必要があるでしょう。1回の休職期間が1年と長すぎる気もしますので、主治医には会社側の懸念を伝えたうえで、会社・生活両面の情報の提供や共有を密にしておくべきです。

   なお、吉野聡医師は、著書『それってホントに「うつ」?』(講談社刊)の中で、職場のうつを「従来型のうつ」に加え、いくつかのパターンに分けて対応策を提示しています。例えば、未熟な人格に発症しやすい「現代型うつ病」の患者には、時には励ましや叱責が効く時があったり、考え方や行動に偏りのある「パーソナリティ障害」には、投薬の効果が出にくくカウンセリングなどを長期に行う必要があったりします。統合失調症や双極性障害など「内因性障害」を併発している場合には、単純なうつ病とは違った治療が必要です。いずれにしても、経験のある主治医と連携し、正しい対応パターンを選ぶことが重要です。

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(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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