2024年 4月 26日 (金)

「世界に冠たる日本の超優良企業」 トヨタという幻想

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   トヨタのリコール問題が日に日に大きくなっている。モノ作りの代名詞にして、日本型雇用の優等生だったトヨタに、いったい何が起こっているのか!

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年間一千億円を超える広告費「トヨタだけは書かないで」

   ・・・なんて不思議に思っている人も多いと思うが、トヨタというのはもともと過大評価されがちな会社だった。近年の好業績にしても、たまたま円安バブルの波にのって北米市場を中心に荒稼ぎできていただけの話で、ビジネスモデル的には特に見るべきものはない。ご自慢のモノ作りなんてほとんどおとぎ話で、以前から品質問題を指摘する声は根強かった。

   たとえば、この問題を正面切って取り上げた『トヨタの闇』(ビジネス社)では、国交省のリコールデータを独自に入手、集計した結果、01~05年の国内リコール件数が529万件に上る事実を明らかにしている。販売台数No.1とはいえ、2位の三菱自動車に200万台以上の差をつける堂々たる“リコール王”である。

   「品質のトヨタ」なんて大嘘八百、「年間出荷台数よりリコール台数の方が恒常的に多い」というほとんどギャグみたいな会社である。「レクサスで打倒ベンツ」なんて言ってたけど、現実には“HONGDA”とか作ってる中国企業とどっこいどっこいだったわけだ。

   では、なぜこの問題企業がこれまでバッシングされずに、のうのうと生きてこられたのか。それは年間一千億円を超える広告費だ。これを引き揚げるといわれれば、出版不況の中、普通のメディアは批判にちゅうちょせざるを得ない。僕自身、これまで多くの紙媒体と仕事をしてきたが、もっとも注意を要する地雷がトヨタだった。「トヨタだけは書かないでほしい」と言われたことは、一度や二度ではない。

   政府に移民受け入れを要求していた奥田会長(当時)の「女性や高齢者、フリーターを雇えなんてバカな話だ」(『日経ビジネス』06年7月24日号)という発言なんて、「平家にあらずんば人にあらず」クラスの超問題発言だと思うのだが、読売から朝日まで、どのメディアも完全スルー。見事なリスクコントロールと言うしかない。ま、僕はあちこちで言ってますけど(笑)。

「信用を取り戻す」でなく「ゼロから作る」覚悟ができるか

   『トヨタの闇』における以下のコメントこそ、カイゼンの本質だろう。

「トヨタからすれば、ユーザーが販売店まで持ってきてくれるし、ガソリン代もユーザー持ち。修理期間中の代車も出す必要はないし、ユーザーが無駄にした時間の補償もしなくてよい。だから、とりあえず販売してしまって、あとから直せばいい。不都合なことはマスコミは書けないからOK……。つまり、消費者を無料のテストドライバーがわりに使っているのが実態なのだ」

   そんなトヨタ式リスクコントロール法にも、死角はあった。鼻薬の効かない海外で問題がクローズアップされたこと、そして本業の業績悪化で広告費をカットせねばならず、メディアが抑えられなくなったことだ。

   要するに「信用に傷がついた」のではなく「信用なんてない会社だということがばれた」と言うべきだろう。メディアの中には、トヨタをつつきたくてウズウズしている人間が多いので、これからどんどんいろんな話が出て切るはずだ。

   トヨタは今後、人件費抑制のために雇用にメスを入れるだろうが、こういうこてこての日本企業は、既得権の見直しの代わりに若手の昇給昇格を抑制するだろう。たとえば、80年代に入った大卒ならどんなバカでも担当部長くらいには出世しているが、これからは過半数が生涯ヒラ社員としてこき使われるはず。

   ただし、「一生懸命働いてもノンワーキングリッチの脂肪が増えるだけ」という組織からは、新しい価値は絶対に生まれない。悪印象を一手に引き受ける形になってしまった新社長には同情するが、「信用を取り戻す」のではなく、「ゼロから作る」覚悟が必要だ。そのために、膿や脂肪を捨て切れるか。トヨタ再生の成否はそこにかかっている。

城 繁幸

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人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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