社員同士のけんかで負傷者、これも労災?

2010/3/19 10:38

   不況で人減らしが起こり、働く人の残業が増えたり、コストダウンを余儀なくされたり、給与カットされたりして、ストレスが溜まる一方。「不機嫌な職場」のギスギス感が高まっている。社員間のコミュニケーションが悪ければ、ちょっとした行き違いが暴発につながることも。ある会社の工場では、恐れていた事態が起きてしまった。

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機械作業の順番をめぐって揉み合いに

――製造業の人事です。ある工場長から、工場内で作業員同士の小競り合いがあったと報告を受けました。機械作業の順番待ちをしていたA君とBさんが、作業の順番をめぐってけんかになったのだそうです。
   自分の順番を抜かされたと思ったA君が、Bさんに文句を言ったところ、いわれのない言いがかりと感じたBさんが反論。A君が暴言を返して、言い争いの末に揉み合いになってしまいました。
   BさんがA君の肩を小突いたところ、はずみでA君がよろけて機械のパイプ部分に強く背中を打ち付け、現場は一時騒然に。気付いたリーダーが止めに入り、事態はようやく収拾したように見えました。
   しかし、問題はそれで終わりませんでした。A君は終業後に病院へ行き、打撲と診断されて湿布などの処置をしてもらったのですが、翌朝から「首が痛い」「頭が痛い」と言って、通院を理由に遅刻したり、会社を休んだりするようになりました。
   あらためて医師に相談すると、「ムチウチの疑いがある」として、長期の通院が必要と言われました。そこでA君は、
「起き上がっていると辛いので、しばらく休みを取りたい。これまで有給休暇を使って通院してきたが、今回はそもそも会社での出来事が原因なので、労災を申請したい」
と、人事に手続きを求めてきました。
   確かに工場内で起きた出来事であり、原因も機械作業の順番をめぐってのことです。しかし、作業員同士のけんかが労災と認められては、会社も手の打ちようがありません。このような場合は、労働災害と認められるのでしょうか。特に、個人的な問題が絡むようなケースについて知っておくべき知識があれば教えてください――

(続く)

尾崎 健一(おざき・けんいち)

臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て、2007年に独立。ライフワーク・ストレスアカデミー代表として企業のコンサルティングを行いながら、秋田大学医学系研究科で自殺予防の研究に携わっている。『ケーススタディ 認知行動カウンセリング』(至文堂)に執筆者として参画。共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

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