「子どもは社会の宝」である理由

2010/9/ 1 12:28

   最近、児童虐待やネグレクトといった事件が相次ぎ、僕は心を痛めている。子どもは社会の宝だ。たとえ少しくらいうるさくても、大人の話を聞かないわがままな子でも、優しく受け止める心を持つべきだ。

   たとえば先日、電車の中で幼い子ども2人を連れた若い母親と乗り合わせた際のこと。僕は自分の席を譲って、彼らを座らせてあげた。

「ありがとうございます」

   そう言って母親は赤ちゃんをひざに抱き、もう1人を隣に座らせる。

「いいんですよ、どうぞどうぞ」

   本当にささいなことですよ、その子たちが僕にしてくれることに比べたら。

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30年後に現役世代の負担は2倍に

   現在の社会保障制度は医療も年金も介護もすべて賦課方式がベースであり、高齢者を14歳から65歳までの生産年齢人口で支えるという仕組みになっている。現在はほぼ3人で1人の高齢者を支えているが、今から30年後には、約1.4人で1人の老人を支えねばならないことが確定している。

   単純に人口比からみても、少なくとも現役世代の負担は2倍にはなるはず。今の平均的サラリーマンが所得税と社会保険料等で3割程度差っ引かれているとすると、6割は持っていかれる計算になる。

   いや、そんなものではすまないはずだ。

   給料はバブル崩壊以降ずるずると低下傾向にあるのだから、「現役時収入の5割死守」を掲げる年金制度を維持するためには、現役世代は少ない給与の中からより多くを負担しなければならない。

   負担はまだある。過去20年の間に無駄に垂れ流された一千兆円にも上る債務残高は、すでにそれ自体が新たな借金を産みだしている。90年代後半以降に増えた債務の3分の1は、過去の借金が雪だるま式に増えた結果だとする試算もある。

   とすれば、仮に今の低金利がこの先もずっと続いたとしても、借金返済のためにプライマリーバランスは一定程度の黒字を維持しないといけない。結局のところ、あらゆる行政のムダを削ったとしても、所得の7割程度は持っていかれることになるだろう。

   30年後といえば、ちょうど僕たち30代の団塊ジュニアが社会保障の受け手に回る頃。そして支えてくれるのは、僕の目の前に座っているいたいけな幼子たち。すでに20年近く逃げ切れた僕たちと違って、この子たちは社会に出た瞬間から両肩にずしりと担いで生きてゆかねばならないはずだ。

   彼らはちょうど30代、恋も仕事も楽しい年頃だろう。でも、きっと彼らに笑顔はないはずだ。一生懸命勉強して良い大学に入って、運よく年収600万円の正社員になれたとしても、彼の可処分所得は200万円にも満たず、今でいうところのワーキングプアそのものだから。

(続く)

城繁幸(じょう・しげゆき)

人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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