2024年 4月 25日 (木)

「寛容に、かつ少し図々しく」 自己主張でストレス軽減

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   できることなら、同僚や上司などとトラブルを起こすことなく仕事をしたいと思っている人がほとんどでしょう。しかし、ちょっとした言葉の掛け違いで、お互いの意にそぐわない結果に至ってしまうこともあります。職場のコミュニケーションを良好に導くためには、相互尊重を基盤とした「アサーション」という自己主張の方法を身につけることが有効です。日常生活の例で考えてみましょう。

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「ウニが少ない!」といきなり怒鳴っていないか

黙っていないで思ったことを言ってみよう
黙っていないで思ったことを言ってみよう

   ある休日、あなたは奥さんと馴染みの寿司屋に出かけました。店でおすすめの「海鮮丼」を初めて注文し、運ばれてきた丼を見たところ、メニューの写真よりもウニの量がずいぶん少ないことに気づきました。

   さて、この後、あなたならどんな行動をとりますか。いきなり寿司屋の店主を呼びつけて、「なんだ、このウニの量は。メニューと全然違うじゃないか!」と怒鳴り散らす人は、自分のことしか考えない攻撃的なコミュニケーションをする人です。

   このタイプは、相手側に落ち度があれば何をしてもよいと考え、自分の主張ばかり強く押しつけます。しかし相手の事情や言い分、気持ちを無視しているので、「美味しい料理を食べさせて欲しい」という主張が伝わりません。

   一方的に言いくるめられた相手は、服従させられた気持ちになります。要求どおりウニの追加が出てきたとしても、以後は敬遠されてしまうでしょう。「この客にはうちに来ないでほしい」と思われれば、扱いも邪険になります。これではお気に入りの店をひとつ失うことにしかなりません。

   仕事でいえば、相手の言い分を聞かずに「なんだこれは!」と頭ごなしに怒鳴り、「最近の若い者は頼りない」などと愚痴を言っているようなものです。

相手に配慮しつつ事実に即して冷静に

   逆に、「ウニの量くらいで文句を言うのも恥ずかしいな」「でもこれだとわかっていたら、最初から注文しなかったのに」と不満に思いながらも、店には何もクレームを言わず、その後その店には二度と行かないという人もいるでしょう。

   このような非主張的タイプの人は、相手の意見を尊重しているように見えますが、心から納得しているわけではないので、我慢が積み重なると欲求不満や怒りがたまり、他人との付き合いがおっくうになってしまいます。

   仕事でいえば、上司や先輩、部下や取引先の言い分に理不尽さを感じても、何も言えずにストレスを溜め込むようなものです。

   いつも遠慮してばかりいると、中には従わせてしまうことへの嫌悪感を抱く人もいるでしょう。結果的に双方に嫌な思いが生まれ、関係は疎遠になります。

   それではお互いを尊重しつつ、かつ自己主張する「アサーティブ」なコミュニケーションは、どうすればよいのでしょうか。ポイントは、事実に即して思っていることを率直に伝えることです。

   運ばれてきた丼とメニューの写真を見比べ、あらためて確認したあとで、再度店員を呼び、

「写真と違うので、もう少しウニの量を増やしてもらえませんか?」

と言い分を冷静に伝えます。自分のことを考えながら、他者をも配慮するやり方です。

   最初に「美味しそうではあるんだけど」と肯定する言葉から始める「イエス、バット」の手法などを組み合わせても効果的かもしれません。

一時的な葛藤を越えて良好な関係づくりを

   ストレスの少ない関係を築くには、たとえ意見の食い違いがあっても、互いを尊重しながら歩み寄ろうとし、面倒がらずにお互いの意見や気持ちを出し合うことが重要です。一時的な葛藤が生まれることもありますが、その後に譲ったり譲られたりしながら、双方にとって納得のいく結論を導こうとするのが「アサーション」の手法です。

   もちろん、相手が理不尽な姿勢を崩さない場合には、成立しないこともあるのですが、それを怖がって初めから非主張を貫いていても関係改善には進みません。

   そもそも、日本人は相手を気遣いすぎるあまり、自己主張が足りずにストレスをためるケースが多いのではないでしょうか。お互いもう少し図々しくなりながら、ちょっとくらいカチンときても相手の言い分を冷静に聞く寛容さが必要なのかもしれません。

   私たちの自己表現の背景となる経験や知識は一人ひとり異なっており、すべての人に容易に理解されるわけではありません。そうした違いを認め、自分を素直に表現し、相手の意見にも素直に耳を傾け理解することが、すがすがしいコミュニケーションを図るためには必要となります。


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今回の筆者:梅田 忠敬(うめだ・ただひろ) 筑波大学大学院人間総合科学研究科 産業精神医学・宇宙医学グループ医局長(産業医・精神科医)。知的労働者のメンタルヘルス、ワークモチベーションが研究テーマ。現在、民間病院で健診部長として勤務するかたわら、公的機関・民間企業で労働者の心身の健康管理にも従事している。

筑波大学大学院・松崎一葉研究室
高度知的産業に従事する労働者のメンタルヘルスに関する研究を行い、その成果を広く社会還元することを目指している。正式名称は筑波大学大学院人間総合科学研究科 産業精神医学・宇宙医学グループ。グループ長は松崎一葉教授(写真)。患者さんを治療する臨床医学的な視点だけではなく、未然に予防する方策を社会に提案し続けている。特種な過酷条件下で働く宇宙飛行士の精神心理面での支援も行っている。松崎教授の近著に『会社で心を病むということ』(東洋経済新報社)、『もし部下がうつになったら』(ディスカバー携書)。
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