2024年 4月 25日 (木)

グレープフルーツで作業効率アップ 「におい」で脳が活性化する

   昔の恋人がつけていた香水を嗅ぐと、切ない思い出が蘇ってくる――。嗅覚の記憶が、個人的な感情を呼び起こすことがあります。

   このような反応を、心理学では「プルースト効果」と呼んでいます。フランスの作家プルーストの「失われた時を求めて」という小説にある、主人公がマドレーヌを紅茶に浸した香りをきっかけに幼少期を思い出すエピソードが由来となっています。

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登山に「におい」のリラックス効果もあり

柑橘類の香りで疲労感の低下も
柑橘類の香りで疲労感の低下も

   脳には扁桃体という部分があり、ドーパミンやアドレナリンなどのホルモンを分泌し、記憶や感情をコントロールしています。この部分が最も活性化されるのは、視覚や聴覚よりも嗅覚刺激であることが分かっています。

   においは、人間の身体に生物学的な反応を引き起こすことで、ストレスの解消や精神的な安定をもたらしているのです。

   たとえば最近ブームになっている「登山」にも、運動の効果だけでなく、自然に存在する匂いが脳に働きかけるリラックス効果もあることが分かっています。

   ヤマザクラ(桜)とマダケ(竹)の匂いによる効果を比較した実験によると、いずれも主観的なストレス軽減効果はなかったものの、ともに脳の活動の沈静化を確認することができました。

   ヤマザクラのにおいは交感神経活動を抑制し、マダケのにおいは交感神経活動を活性化させることで、心身をリラックスさせていたのです。

   この効果は、職場においても応用することができると思います。グレープフルーツやラベンダーの香りや、ゼラニウムの香りを嗅ぎながらパソコン作業をする実験では、作業効率の向上や疲労感の低下といった効果が確認されています。

   不眠に悩む人が就寝時にアロマテラピーを活用することで、睡眠の質が改善したという話は、よく聞かれるところです。

   ただし、どんなにおいがどのような効果をもたらすかは、大まかな傾向はあるものの、個人的経験によって異なるところもあるようです。くれぐれも肝心なときに失恋相手の香水を間違って嗅いでしまわないように。


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今回の筆者:友常 祐介(ともつね・ゆうすけ) 筑波大学大学院 人間総合科学研究科産業精神医学・宇宙医学グループ所属。労働衛生コンサルタント。筑波研究学園都市で働く研究者のメンタルヘルスに関する研究で医学博士を取得。現在、日本原子力研究開発機構などで産業医を務め、幅広い健康管理に携わっている。

筑波大学大学院・松崎一葉研究室
高度知的産業に従事する労働者のメンタルヘルスに関する研究を行い、その成果を広く社会還元することを目指している。正式名称は筑波大学大学院人間総合科学研究科 産業精神医学・宇宙医学グループ。グループ長は松崎一葉教授(写真)。患者さんを治療する臨床医学的な視点だけではなく、未然に予防する方策を社会に提案し続けている。特種な過酷条件下で働く宇宙飛行士の精神心理面での支援も行っている。松崎教授の近著に『会社で心を病むということ』(東洋経済新報社)、『もし部下がうつになったら』(ディスカバー携書)。
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