ムリな接待でタクシーに嘔吐 「クリーニング代は会社が払え!」

2012/1/20 12:21

   不況下で会社が収益を絞りだすために、社員に過重労働を強いるようになって久しい。成果を手っ取り早く出したい上司は、能力が高く処理スピードが速い社員に仕事を集めるので、特定の社員が疲弊するのもよくあることだ。

   ある会社では、多忙すぎる中堅社員が接待後に体調不良で嘔吐してしまい、人事部に「上司の責任」を問いただしに来たという。

「好きで吐いたんじゃない。仕事で吐いたんだ」

――専門商社の人事です。中堅営業社員のAさんから、興奮した様子で相談に来ました。先日、重要顧客の引継ぎを兼ねた新年会があり、B課長とともに先方の接待をしたそうです。

   Aさんは年末から出張続きで、その日も3日間の出張から帰ってきた足で参加しました。疲労が蓄積し風邪で高熱も出ていたので、出張先からB課長に日程の延期を打診しましたが、受け入れられなかったといいます。

   宴席でソフトドリンクを頼もうとしましたが、B課長の「こいつは酒が強いので、なかなか頼もしいんですよ」という言葉に乗って、先方も絶えずビールを注ぎます。

   帰り道、Aさんはタクシーの中で激しく嘔吐してしまいました。後部座席がすっかり汚れてしまったので、運転手に謝ったうえ、相談してクリーニング代3万円を支払い、受取証をもらいました。

   2日間寝込んで出社した日、AさんはB課長のところに行って事情を話し、受取証を示して、会社がクリーニング代を支払うよう頼みました。しかしB課長は、

「自分が酒を飲んで吐いた始末を、会社に払わせるやつはいないだろう。タクシー代は精算するが、クリーニング代はムリだ」

と突っぱねました。これを聞いたAさんは激昂し、

「接待は大事な仕事だから出ろと言ったのは、課長じゃないですか? こっちだって好きで吐いたんじゃないんです。仕事で吐いたんですから、会社に責任ありますよ!」

と反論し、その足で駆け込んできたのだそうです。接待が休めない仕事であったのは間違いないようですが、帰りのタクシーの中で起こったことまで会社が面倒みないといけないものなんでしょうか――

(続く)

尾崎 健一(おざき・けんいち)

臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て、2007年に独立。ライフワーク・ストレスアカデミー代表として企業のコンサルティングを行いながら、秋田大学医学系研究科で自殺予防の研究に携わっている。『ケーススタディ 認知行動カウンセリング』(至文堂)に執筆者として参画。共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

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