トップは「逃げる、隠す、ウソつく、なすりつける」 実体験から「企業衰退の道」を分析

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   東証1部上場のリソー教育が粉飾決算を行い、6年半にわたり連結決算で83億円の売り上げなどを不正に計上していたことが明らかになった。

   2013年6月に公募増資と自己株処分により約44億円を調達。同年9月には創業者で大株主の岩佐実次氏が突如、後継者育成を図るために社長を降りて代表権のある会長に専念すると発表。同年12月には「第三者委員会設置に関するお知らせ」を発表。元名古屋高検検事長を委員長として、元・前地検検事正、公認会計士を委員にそろえた。14年1月6日には14年2月期・第3四半期報告書の提出遅延を申請し、1月9日に承認(2月14日まで)。2月10日に第三者委員会調査報告書を受領し、2月14日には再発防止策、14年2月期・第3四半期の業績修正、決算短信だけでなく、過年度(6年分)の有価証券報告書・決算短信訂正までIRしてみせた。また、「経営責任を明確にするため」に2013年9月に就任したばかりの代表取締役ら3人が辞任し、岩佐会長が社長を兼務した。岩佐氏は報酬4か月分を自主返納して経営責任を明確にしたという。

リソー教育の対応、広報・IRの観点からは説明不足

   これら一連の対応は、会社の存続を第一義に考えれば、見事といえる。第三者委員会の調査報告でも指摘された「有価証券の虚偽募集」によって資金は調達できた。四半期報告書の提出を延期期限どおりに行ったことで、株式上場廃止を免れた。調査報告書が、粉飾決算の関与について、岩佐氏は「全く関与していなかった」とし、その他の取締役は「黙認していた可能性がある」とだけしか認定しなかったことで、創業者である岩佐氏は社長兼会長として引き続き君臨する。検察庁の元幹部が顔をそろえた第三者委員会が責任をうやむやにしたことで、刑事事件に発展する可能性も極めて低い。

   一方、広報・IRの観点からみると、説明が全く不足している。同社のホームページでは「高品質な本物の教育サービスを提供し、業界ナンバーワンから日本を代表するオンリーワン企業へ」と謳っている。学習教育のリーディングカンパニーとして、子供たちや保護者の方々にどのように説明するのか。2013年11月に証券取引等監視委員会の任意調査があった(IRはされていない)と言われているが、その事実はあったのか。いったい誰が長期にわたり粉飾決算を実行していたのか。監査役や監査法人は、どのような見解を持っているのか。謎に包まれていることが多く、信用回復には程遠い印象がある。

トップをはじめとする上層部への罰則規定を強化する

   上場企業における粉飾決算等の不祥事は、上場後、日が浅いジャスダックなどの中堅・中小企業に起きやすい。オーナー型企業が多く、コンプライアンス(法令順守)よりもオーナーの意思決定が重視されやすいからである。筆者もかつて、東証マザーズ上場企業において、粉飾決算、第三者委員会設置、業務改善命令、決算の過年度修正を体験した。それらの経験から分析した「企業衰退の道」は以下のとおりである。

(1)トップは「逃げる、隠す、ウソつく、なすりつける」
(2)役員、幹部、従業員は「事なかれ主義」
(3)監査役、内部監査部門が足元で何が起こっているのかを徹底調査できず、トップ、役員の説明だけで納得してしまう
(4)監査法人もトップにヒアリングを受け、情緒的に流される
(5)資金の流れの解明において、二重三重のチェックが働かない
(6)売り上げが上がらないのに。経費管理が甘い
(7)収益が悪化すると、食い物にする輩が出現

   そうならないようにするには、次のポイントが重要になる。

(1)会社の理念、哲学を周知徹底し、社会に生き、お客様に生かされていることを事あるごとにトップが周知徹底する
(2)社外役員、監査役、内部監査部門、監査法人には、その企業理念をもとにタイムリーな情報の提供、身分・契約の保証を約束し、トップの暴走を防ぐ
(3)とくに経理部門と情報管理部門を中心に、内部統制システムを構築し、例えば1万円以上の資金移動については必ずダブルチェックした後に処理する
(4)コンプライアンスの徹底を図るため、とくにトップをはじめとする上層部への罰則規定を強化する
(5)静かすぎる会社はいけない。情報共有化のためにも、多少のざわつきは許容する
(6)収益が悪化したら、とにかくそれを食い止める。収益が悪化すると、付け狙う輩が出現する。暴力団排除条例もあり、弱みを見せてはいけない
(7)不祥事が発生したら、トップをはじめとする当事者は潔く身を引く

(管野吉信)

管野 吉信(かんの・よしのぶ)
1959年生まれ。日刊工業新聞社に記者、編集局デスク・部長として25年間勤務。経済産業省の中小企業政策審議会臨時委員などを務める。東証マザーズ上場のジャパン・デジタル・コンテンツ信託(JDC信託)の広報室長を経て、2012年に「中堅・中小企業の隠れたニュースを世に出す」を理念に、株式会社広報ブレーンを設立。
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