2024年 4月 23日 (火)

「不正の兆候」生かせず被害15億円 「異常行動」はなぜ見逃されたのか

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   日本を代表するエレクトロニクスメーカーのグループ企業A社の経理部マネージャーBが、8年以上にわたって着服を繰り返していた。被害は15億円以上に上り、Bはそのすべてを競馬、FX、ロトなどにつぎ込んだという。

   「内部統制が行き届いているはずの一流企業で、なぜこんなことが」と疑問の声が上がるだろうが、何十という子会社を抱えていると、親会社としてすべてに目を光らせるのは不可能だ。孫会社、ひ孫会社になると実態は中小企業で、経理を一人に任せているところもあるだろう。

「任せる」が「任せきり」に

「監査前日に1人で夜遅くまで残業」って…
「監査前日に1人で夜遅くまで残業」って…

   問題は「任せる」が「任せきり」になってしまうところだ。今回の不正でも、A社は会社分割によりエレクトロニクスメーカーの傘下に入った経緯もあり、経理部門の人員は、分割前の15人程度から部長(役員が兼務)も含めた4人に減り、入社以来経理一筋のBが、実質的に一人で現金・預金の取り扱いを仕切るようになった。着服に手を染めたのは、会社分割からわずか1か月だった。

   Bは大学時代からパチンコが趣味で、入社してからは競馬にはまり込んでいった。当初は小遣いで賄える範囲だったが、負けは必ず取り返すという性分がたたり、借金の清算で家族に迷惑をかけるまでになってしまった。家族の手前、ギャンブルをやめたことにしたが、密かに続けていたらしい。

   始まりは、経理部が金庫内に保管する小口現金の着服で、つい出来心で数万円を「拝借」し、競馬で儲けて元へ戻そうという典型的なパターンだった。しかし、案の定、負け続けて家族に泣きつくこともできず、一人悶々としながら、小切手の不正換金、ファームバンキングの悪用へと横領の手口は発展していった。

   会社の事情聴取にたいしてBは「小切手を最初に着服したとき、もう引き返せないことになってしまった」と語ったそうだ。そうなる前に摘発できていれば、会社はもちろんB自身も救われただろう。Bは刑事告訴され、着服期間や被害総額から見て実刑判決を受ける可能性が高い。

甘粕潔(あまかす・きよし)
1965年生まれ。公認不正検査士(CFE)。地方銀行、リスク管理支援会社勤務を経て現職。企業倫理・不祥事防止に関する研修講師、コンプライアンス態勢強化支援等に従事。企業の社外監査役、コンプライアンス委員、大学院講師等も歴任。『よくわかる金融機関の不祥事件対策』(共著)、『企業不正対策ハンドブック-防止と発見』(共訳)ほか。
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