「進化しているマニフェスト2014」を読む

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   いよいよ選挙戦がスタートした。論点が見えにくいためか、いま一つ盛り上がりに欠ける選挙戦に見えるが、若年層にとってはこれからの十年を占う重要な節目になるというのが筆者の見方だ。というわけで、基本的な各政策の判断基準を整理しておこう。

そもそも、その政策は実現可能か


   政策というものは、実現可能性が低ければ低いほど美しく聞こえるものだ。たとえば、かつて民主党は「最低賃金を1000円に引き上げる」「製造業派遣を禁止して正社員にさせる」というとても美しい公約を掲げて選挙に勝ったが、与党になった瞬間にどちらもあっさり反故にした。最低時給を千円にすれば千円以下の生産性の人は失業し、派遣を禁止すれば拠点が海外に流出するだけの話なので、彼らが約束を破ったのはむしろ良心的な選択だったと言える。要するに、最初から実現可能性が無い政策だったわけだ。


   今でもマニフェストを見ると「最低時給を引き上げさせます」だの「非正規雇用を規制して正社員化させます」といった政策が性懲りもなく並ぶ政党があるが、票をドブに捨てるようなものなので無視してかまわない。

対案は示されているか


   何かに反対するのであれば、きっちり対案を示すことが重要だ。逆に言えば、対案のない反対は、既得権を持つ側の人間が現状維持のために反対しているだけというケースがほとんどと言ってよく、そうしたものとは無縁な若い世代が支持するメリットは何もない。


   今回の選挙では、すべての政党が現時点での消費税増税反対を明記しているが、

1:増税時期にくわえて(歳出増の最大要因である)社会保障の抜本的見直しに言及している政党
2:期限を決めて引き上げを明記している政党
3:増税時期も社会保障見直しにも一切言及していない政党

に分かれている。逃げ切り狙いの高齢者ならともかく、現役世代なら1番、最低でも2番が支持する上での最低条件だろう。

痛みを伴う政策かどうか


   経済成長はあくまで個々のプレイヤーである企業や個人がするものであって、政府が特定の産業を成長させたり、バラマキで国民を豊かにしたりするのは不可能だ。だから、政府がそのための出来るのは規制緩和くらいであり、何らかの痛みを伴う政策となる。国民の誰にも痛みを与えない、誰からも既得権を取り上げない夢のような政策が並んでいれば、その政党は最初から何も実現する気が無いと思っていいだろう。


   先日、筆者自身も参加する若者マニフェスト策定委員会は、主要政党のマニフェストを採点の上、ニコニコ生放送上で解説するというイベントを行った。3時間40分という超長時間放送にもかかわらず、3万人を超す来場者にコメント数1万6000と、イデオロギー色のない政治コンテンツとしてはかなりの反響だったように思う。


   その中でも話題となったのが、全般的なマニフェストの進化だ。2008年に初めて政党マニフェストを評価した時には、特に雇用分野なんてすべての政党がマイナス評価でしかなく「本当にこういう活動を続ける意味があるのか」と真剣に悩んだ記憶がある。


   だが、ダメ出しを続けるうちに「労働市場流動化」や「世代間格差是正」を明言する政党がぽつりぽつりとあらわれはじめ、いまや複数の政党がそうした方向性を打ち出しつつ、独自性を競う状況となっている。マニフェストは死語だ、なんて言う人も多いけれども、着実に政策は進化しているわけだ。これは素直に評価していいだろう。


   一方で、同じ6年間、まったく実現する可能性もその気もない政策を並べ続けている政党も、残念ながら存在する。目立った争点は無いのかもしれないが、若年層が一票を有効に使うことで、変化する気の無い政党に変化をうながすきっかけになれば幸いである。(城繁幸)

人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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