古賀茂明氏が越えてしまった「一線」 「メディアへの圧力」を考える

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   先日、元経産官僚の古賀茂明氏が報道ステーションの生放送中に暴走し、ニュースそっちのけで10分以上にわたり手製フリップを出すわ自身の降板問題をぶちまけるわで、大きな話題となっている。


   果たして氏の言う通り、氏の降板の背景には政府の陰謀のようなものがあったのだろうか。


   いい機会なので、メディアの裏側の力関係についてまとめておこう。

「政治の圧力」ほど、メディアにとって美味しいネタはない

越えてはならない一線とは
越えてはならない一線とは

   一部の人たちの夢を壊すようで悪いが、結論から言うと「メディアに政府が圧力をかける」ということはまずありえない。仮にやったとすれば、報ステあたりなら大喜びして「徹底検証!政府による圧力と報道の自由について」とかなんとかいって2時間特番くらい組むだろう。「政府は常に暴走するリスクがあるからチェックするのが我々の役目だ」と考えている彼らにとって、これほど美味しいネタはないからだ。


   数年前、筆者自身も出演していたサンデープロジェクト(テレビ朝日系、2010年3月終了)では、1985年の派遣法成立時の厚労省事務次官の自宅にカメラが突撃して老人を追い回すVTRが流されたことがある。別に彼らが利益目的でやったわけでもなんでもなく「全員終身雇用で雇わせるという狂気の政策」に代わる常識的な規制緩和なのに、制作側はまるで「大企業と結託して甘い汁を吸った張本人」と言わんばかりの悪趣味なVTRだった記憶がある(さすがにやりすぎたらしく、後にBPO審査にかけられていたが)。


   彼らにとって政府とは、世の中で起きている不都合の責任をかぶせ、叩き、粗を探す獲物ではあっても、恐れるべき怪物ではないのだ。


   というような話は、メディアの作り手や出演経験のある人なら誰でも知っている話だ。もちろん、経産省OBであり報道ステーションのレギュラーでもあった古賀さんも知らないわけがない。だからこそ、彼の発言は、メディアの作り手からすると、とうてい看過できないものだろう。

作り手との信頼関係

「テレ朝のトップが政府の圧力に屈したから自分は辞めさせられます」

と、自分がレギュラーを外される理由をトップのへたれっぷりのせいにされた上、生放送の場で全国に放送させられてしまったわけだから。古賀さんは一部で反体制のヒーローになれるかもしれないが、テレ朝は広く赤っ恥をさらしたわけだ。


   筆者自身、発言部分が全編カットされたり、後で小言を言われたりしたことは結構あるが、それでも今のところ干されていないのは、作り手側との信頼関係を壊すような発言はしていないからだと思う。古賀さんは明らかに越えてはならない一線を越え、作り手との信頼関係を木端微塵にぶち壊してしまった。おそらく報道系の番組で彼を使おうという局はもうないのではないか。

「メディアがもっとも怖いのは政府ではなくスポンサー」

   とはいえ、公平を期すため、メディアが100点満点とは程遠い現実も付け加えておこう。彼らにも怖い怪物はいる。それは政府ではなく、お金の出し手であるスポンサーだ。活字、テレビを問わず、大口で鼻息の荒いスポンサーが圧力をかけてくれば彼らは勝てないし、多くの場合、圧力がかかる前段階で「自主規制」という形でコンテンツを修正してしまう。筆者自身、政府が怖いから云々というのは聞いたことは無いが、「スポンサーの〇〇が怖いから」という理由で文章やコメントを掲載拒否されたことは何度かある。


   最近、使い物にならずにメディアからリストラされた識者たちが連合して「政府の言論弾圧を許すな」的なキャンペーンを張っているのをたまに目にする。彼らも古賀氏と同様、「自身の使えなさ」を棚に上げて全部メディアに責任をおっかぶせているわけで、ますます自分の首をしめているようなものだろう。


   はっきり言うと、日本のメディアで政府の圧力云々を心配する暇があったら、JTとトヨタの圧力の方を心配した方がいいんじゃないか、というのが筆者の意見である。(城繁幸)

人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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