巨大株式会社を解体せよ 「法人資本主義」の大御所が出した「結論」

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『資本主義という病』(奥村宏、東洋経済新報社 税別1500円)

 

   15年ぶりに日経平均株価が2万円を超えたとかで、経済界はアベノミクス相場に浮かれている。一方で、東芝やシャープという日本を代表する大企業が深刻な経営危機にのたうち回っている。

   いまの日本の企業社会の矛盾したようにもみえる状況を考えるうえで、奥村宏の新刊は大きな視点を与えてくれる。奥村は今年85歳。「法人資本主義」という概念の生みの親で、1990年代に相次いだ大企業の不祥事では、多くのメディアがコメントを競って掲載した。

構造的な危機を分析

   副題に「ピケティに欠けている株式会社という視点」とあるように、最近の「資本主義論本」ブームに、「私にも言わせろ」と乗り込んできた感のある一冊でもある。

   トマ・ピケティの『21世紀の資本』や、水野和夫の『資本主義の終焉と歴史の危機』などのベストセラーに不満を漏らし、「いま、もしマルクスが生きていて『資本論』を書いたとすれば、きっと株式会社を論じた」と断じて、論を進める。

   現代資本主義の危機が、戦後の株式会社の肥大化にある。これが本書の、そして奥村の一貫したテーマである。新聞記者から始まる自分史も重ね合わせながら、各章で過去の自作本の参照を繰り返すのが目にはつくが、「会社学研究家」を自認して企業批判を続けてきた大御所の足跡を確認する意味があると思えば、許せる範囲といえるか。

   株主の有限責任、株式会社同士の株式持ち合いなど、日本では当然のこととされてきたことが、資本主義の初期段階では認められなかった、と奥村はあらためて問う。株の持ち合いが改めて問題視されているいま、奥村の歴史的な視点からの指摘は意味がある。

   株主の有限責任が株式会社の無責任につながっている、という奥村は、東日本大震災で福島原発の大事故を起こした東京電力の責任放棄を、この観点からも激しく批判する。

   奥村は、「(日本では)戦後の混乱期を経たあと、やがて『国家』に代わって『会社』が体系の柱になって全体主義が復活した」と指摘。そのうえで「巨大株式会社を解体して、それに代わる新しい企業を作っていくことが二一世紀の人類に与えられた課題」とまで言い切る。世界の巨大企業が構造的に生んだ危機を分析し続けた老学者の結論だ。

   東芝のことを一行も書いていないのに、東芝のことがよくわかった気になる。(PN)

『資本主義という病』
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