2024年 4月 23日 (火)

1日5000円でヒモを飼う快楽 男の生活支え満たされる日々

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   私にはヒモが1人いる。ヒモなんて言わずに「男性を1人養っている」といえば格好良いが、家賃はじめ彼の生活をまるごと引き受けているわけではない。ただ、会うときの資金源はすべて私であり、さらには交通費も支給しており、小遣いもあげているので、「ヒモ」くらいの表現は許されるのではないか、と本人に聞いてみたら、ヒモ自ら「いいよ」と許可を出してくれた。今回はそんな「愛すべきヒモと生活する楽しさ」を紐解いてみたい。

  • ついておいで
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正直「悪くない」と思った

   彼が私の生活にスッと入ってきたのは、数か月も前のことだったろうか。ときどき食事へ行く仲であったが、いつの間にか部屋にいつくようになった。

   はじめて「ただいま~!」と言って、仕事から帰ってきたときの衝撃は忘れられない。「ここはアンタの家なのか?」と怒ってみたが、正直「悪くない」と思ったことを告白する。ヒモ体質の男性は、相手の生活を「邪魔しない」のが上手いのだ。なし崩し的に、彼は私の生活に馴染んでいった。

   私の部屋から仕事へ出かけていくようになった。彼の仕事は正社員ではないので、収入はおぼつかない。が、もともとヒモ体質らしく、多くの女性から貢がれていたので、服装や持ち物、女性に対する礼儀などはしっかりしていた。ひとつのカバンに、歯磨きから整髪料から毛抜きまでがコンパクトに収められていて、あとは女がTシャツでも貸せばすぐに泊まれる「ノマドぶり(?)」には参った。

   さらには家事が得意で、掃除から洗濯まで完璧にこなすのである。仕事の愚痴も聞いてくれて、私をたびたび褒めてくれる。仕事のストレスがあった私は、彼との生活で正直、かなり助けられたと思う。これでは居候も断れない。

自然に「何かお返しがしたい」と

   彼は付き合い始めた最初のうち、少ない収入の中から色々おごってくれた。誕生日に悩み抜いてケーキを予約してくれたり、家電が壊れるとサプライズで買って来てくれたり、限定のお菓子(といってもひとつ200円ほど)を毎回持ってきてくれるなど、なかなか小憎い演出が多かったように思う。気遣いの人であった。

   そんなことがあっても、すぐに「この男性をヒモにしよう」と思ったわけではない。ただ、家事全般をやってくれるのが嬉しくて、「何かお返しがしたい」と自然に考えるようになったのだ。

   はじめは、彼がスーパーへ買い出しに行くたびに自腹を切っていた食費も、私がすべて出すようにした。2人で外食するときも、私が払うようになった。「男性と2人の食事で、女がおごるなんて格好悪い」と思う人もいるかもしれないが、一度、レジでさっそうと財布を出してみてほしい。これが気持ちいいのだ。

   毎度の食事をおごるというのは、その人の生を支える行為なのだ。私の一存で、この男は生きてもいけるし、生きていけなくもなる。大袈裟かもしれないが、この快楽に気づいてからは、彼との関係を「ヒモ」と表現することにためらいがなくなった。ヒモと言ってしまうほうが、説明しやすくラクであるし、堂々と「すべて私がおごっています」と言える。

   今ではすっかり、「ごちそうさま」の声が嬉しい私である。彼と1日過ごすと、平均5000円くらいの出費になる。1か月の半分一緒にいるとしても、7万5000円の支出。この数字、北欧などで導入が噂される「ベーシックインカム」の想定額と同じくらいなのだ。

   そう、私はヒモに金銭を与えることで彼の「最低限度の生活」を保障している! と、大それたことを言ってみる。この快楽はやってみた人にしか分かるまい。

   ぜひ皆さんも、ヒモを見つけて積極的に贈与してみてはどうか。きっと人生が豊かになると思う。貯金は減るけれど。(北条かや)

北条かや
北条かや(ほうじょう・かや)
1986年、金沢生まれ。京都大学大学院文学研究科修了。近著『インターネットで死ぬということ』ほか、『本当は結婚したくないのだ症候群』『整形した女は幸せになっているのか』『キャバ嬢の社会学』などがある。
【Twitter】@kaya_hojo
【ブログ】コスプレで女やってますけど
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