友人は毎月残業90時間だって 残業代出れば違法ではないの?

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   暦の上では春を迎えましたが、まだまだ寒い日が続いていますね。寒いと外出も控えがちになってしまいますが、こんな時こそ一歩外に出て、冷たい空気に触れて仕事で疲れた体をリフレッシュするのもいいかもしれません。

   今回は、ふとしたきっかけで友人の長時間残業を知った方のエピソードをもとに、残業の協定について詳しく解説いたします。(文責:「フクロウを飼う弁護士」岩沙好幸)

  • 毎日遅くまで残業、残業――でも違法とはいえない場合も
    毎日遅くまで残業、残業――でも違法とはいえない場合も

事例=友人は毎月残業90時間だと、違法ではないのでしょうか

   先日、久しぶりに地元の友人たちと飲みに行ってきました。みんなそれぞれ様々な職業についていますが、上司や仕事の愚痴を言い合ったりして、まるで学生時代に先生や授業の愚痴を言っていた頃に戻ったような気がして、とても楽しい時間を過ごしました。

   いい時間になり、そろそろ解散......というところで友人の一人が「学生の頃は朝まで飲んでそのまま授業とか行っていたのに、今は一日数時間の残業でさえ辛い」と言い出してまたみんなで笑って、そこから月にどれぐらい残業しているのか、という話になりました。

   僕は繁忙期に月20時間ほどなのですが、なんと毎月少なくとも90時間は超えているという友人もいました。「残業代は出ているからブラックじゃないよ」と友人は笑っていましたが、笑いごとではないと思います。

   残業代が出ているとはいえ、こんな長時間労働は違法にならないのでしょうか?

弁護士回答=労使協定に「特別条項」設ければ違法でないことも

   労働基準法では1日8時間、週に40時間を超える労働は原則として認められておらず、たとえ残業代を支払っていてもこの時間を超えて労働させることは違法になります。

   もっとも、このルールには例外があります。

   会社と労働者の協議で労使協定が結ばれれば、先ほどの上限を超えてもその協定の範囲内で残業させることが認められます。この協定は労働基準法36条に根拠があるものなので、通称「サブロク協定」と呼ばれています。

   では、サブロク協定を締結してさえいれば労働者に何時間でも残業させてもよいのかというと、そうではありません。例えば、1か月で45時間、3か月で120時間、1年で360時間というように、対象期間ごとに上限が決められています。

   それでは、なぜ月90時間もの残業などといった事象が身の回りで起きたり、ニュースで報じられたりするのでしょうか。厚労省の過労死基準においても月80時間以上という数字が出てくるのでしょうか。

   実は、サブロク協定の中で「特別条項」を設けていれば、一定の期間について協定の上限時間を超えて残業をさせることができるのです。この特別条項の存在があることから、サブロク協定が長時間労働の温床になっているとの指摘がなされています。 厚生労働省も、長時間労働の歯止めとして十分機能していない、現在の規制のあり方について法改正を検討する必要があるとの認識を示しています。

企業側にも意識改革が不可欠

   そこで、現在、サブロク協定に関しては、(1)上記特別条項に上限を設ける、(2)原則として協定の上限を超えることを禁止し、上限を超えた場合の罰則規定を新設するなどといった見直し案が出ています。

   こうしたサブロク協定の見直しがあれば、少なくとも企業が合法的に残業を強いるといった事態を抑制できる可能性は確かにあります。もっとも、実企業社会でみられる多くの残業は、いわゆるサービス残業であり、特別条項に上限時間を設けたりすると逆にサービス残業を助長するだけなのではないかという疑問も残ります。

   したがって、制度の見直しを行うと同時に、企業側が残業に対する意識を変え、適切に人員を配置したり、無理を強いない程度で業務効率の改善を進めていくことも不可欠だといえます。

岩沙好幸(いわさ・よしゆき)
弁護士(東京弁護士会所属)。慶應義塾大学経済学部卒業後、首都大学東京法科大学院から都内法律事務所を経て、アディーレ法律事務所へ入所。司法修習第63期。パワハラ・不当解雇・残業代未払いなどのいわゆる「労働問題」を主に扱う。動物が好きで、最近フクロウを飼っている。「弁護士 岩沙好幸の白黒つける労働ブログ」を更新中。編著に、労働トラブルを解説した『ブラック企業に倍返しだ! 弁護士が教える正しい闘い方』(ファミマドットコム)。
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