2024年 3月 29日 (金)

日本と韓国の国宝「半跏思惟像」、なぜ似てる? 初の2体同時展示、「そっくりさん」の謎に迫る

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   左足を折って右足のひざに乗せ、静かに物思いにふける。右手の指先はそっと右ほほに添えられている。日本と韓国の代表的な国宝「半跏思惟像(はんかしゆいぞう/はんかしいぞう、とも)」が、2体一緒にそれぞれの国で展示されることになった。史上初の快挙だ。

    2016年5月24日から6月12日まで、まずソウルの韓国国立中央博物館で「韓日国宝半跏思惟像の出会い」が開かれ、そのあと6月21日から7月10日まで東京国立博物館の特別展「ほほえみの御仏-二つの半跏思惟像-」で再び2体が同時展示される。海を隔てて6~7世紀に制作された、ほとんど同じようなポーズの有名な仏像は何を物語るのか。千数百年の時を経て21世紀のいま並んで公開される意義は?

  • 日韓関係の過去と現在そして未来に静かに思いをめぐらせているかのようだ</br>
(左)国宝 半跏思惟像(奈良 中宮寺門跡)、(右)韓国国宝78号 半跏思惟像(韓国国立中央博物館、同博物館提供)
    日韓関係の過去と現在そして未来に静かに思いをめぐらせているかのようだ
    (左)国宝 半跏思惟像(奈良 中宮寺門跡)、(右)韓国国宝78号 半跏思惟像(韓国国立中央博物館、同博物館提供)
  • 日韓関係の過去と現在そして未来に静かに思いをめぐらせているかのようだ</br>
(左)国宝 半跏思惟像(奈良 中宮寺門跡)、(右)韓国国宝78号 半跏思惟像(韓国国立中央博物館、同博物館提供)

地域や時代で名前が変わる

   東京国立博物館で4月20日に開かれた特別展主催者による記者発表会では、アジア文化芸術協会会長の大橋一章・早稲田大学名誉教授らが半跏思惟像の歴史や見どころを紹介した。

①製造年代がなぜ分かるか

   韓国の半跏思惟像はソウル・韓国国立中央博物館が所蔵する国宝78号像。銅造で高さ83センチ、6世紀後半の作とされる。韓国を代表する国宝だ。

   日本からは奈良・中宮寺門跡に伝わる国宝の半跏思惟像。クスノキ材で高さ約123センチ。7世紀後半の作とされる。50円切手のデザインにもなって親しまれてきた。

   両像には製造年月の銘文がないのになぜ「6世紀後半」とか「7世紀後半」と分かるのか。大橋名誉教授によると、基準となる同時期の他の作例との比較などから、おおむね時期が特定されるという。

②日本でどうやってつくったか

   古代の日本に仏教が伝来したのは6世紀。最近では538年説が有力だ。百済の聖明王から経典などがもたらされた。しかし、当時の日本ではまだ独自に寺や仏像を造る技術がなかった。577年、百済から技術者集団(造寺工や造仏工)がやって来る。彼らに学んで日本での本格的な仏像づくりがスタートした。「技術を習得して一人前になるまでに10年ぐらい修業しただろう」と大橋名誉教授は見る。

③どんな名前だったか

   半跏思惟像という形式の仏像は、紀元1~3世紀のガンダーラ仏教のころからつくられていた。釈迦が思索する姿を表し、釈迦の名前から当時は「シッダールタ太子像」と呼ばれていた。それが、中国を経て朝鮮半島に伝わると、同じポーズの仏像が弥勒菩薩像と呼ばれるようになる。そして日本では次第に如意輪観音とか救世観音と名前を変えた。地域や時代によって名称が変化している。今回の展覧会では「弥勒」や「観音」の名は付けず、単に「半跏思惟像」と記している。

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