2024年 4月 19日 (金)

竹内整一さんが新著『日本思想の言葉』
川端康成や吉田兼好から「精神史」探る

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   「自分は、日本人の、どのような精神史を引きずって生きているのか」――誰しもしばしばそのような疑問に取りつかれることがある。

    倫理学者、竹内整一・鎌倉女子大教授の新著『日本思想の言葉』(角川選書)には、そうした問いかけに答える「ヒント」が散りばめられている。

『日本思想の言葉』(角川選書)
『日本思想の言葉』(角川選書)

先人の「言葉」を手掛かりに

   新著のサブタイトルは「神、人、命、魂」。それぞれに一章を割いて、主に文学作品などに残された先人の「言葉」を手掛かりに「日本人の精神史」に迫る。

   たとえば「魂」という章では、川端康成の、「魂という言葉は天地万物を流れる力の一つの形容詞に過ぎないのではありますまいか」という言葉が紹介される。初期の代表的な短編『抒情歌』に出てくる一文だ。恋人に捨てられ、その人の死を知った女性が、どのようにしてその喪失を受け止めようとしたか――。三島由紀夫は、『抒情歌』を、「川端康成を論ずる人が再読三読しなければならぬ重要な作品である」と評していた。

   著者は志賀直哉や柳田国男などにも敷衍しながら、「川端もまた、どうしても忘れられない死者への思いを、天地万物の大きな流れの中に置きなおして受け止めようとしていた」と指摘する。そうしなければ、われわれの魂は「寂しく」なってしまうのだ、と。そして主人公の言葉を続ける。「私は禽獣草木のうちにあなたをみつけ、私を見つけ、まただんだんと天地万物をおおらかに愛する心をとりもどしたのでありました」。

   ここでいう「われわれの魂」こそが、今の日本人にも引き継がれているということなのだろう。このほか「情」、「時」、「死」などの章もあり、吉田松陰、夏目漱石、九鬼周蔵、吉田兼好、宮沢賢治など多彩な人々の「言葉」を手掛かりに、日本人の精神史を明らかにしようとする。

    竹内氏は日本倫理学会会長。『やまと言葉で哲学する』(春秋社)、『「やさしさ」と日本人』(ちくま学芸文庫)、『「かなしみ」の哲学』(NHKブックス)など多数の著書がある。日本思想史研究の第一人者。本書は、月刊『武道』(日本武道館刊)に3年間連載した初出文を抜粋、加筆した。1600円(税別)。

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