【東京農業大学(共同研究)】北海道の海には2タイプのシャチがいる
記事配信日:
2026/01/22 14:00 提供元:共同通信PRワイヤー

2026 年 1 月 22 日
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202601212777-O2-9jbV0563】
概要
京都大学 野生動物研究センター(大学院理学研究科)博士後期課程学生の鈴木 百夏氏、同センターの三谷 曜子教授、佐藤 悠助教、村山 美穂教授、北海道大学大学院 環境科学院修士課程修了生の河合 真美氏、同大学大学院 地球環境科学研究院の早川 卓志助教、同大学大学院 水産科学研究院の松田 純佳研究員、松石 隆教授、東海大学 生物学部の北 夕紀教授、同海洋学部の大泉 宏教授、国立科学博物館 動物研究部の塩崎 彬研究員、田島 木綿子研究主幹、故 山田 格名誉研究員、宮崎大学 教育学部の西田 伸教授、昭和医科大学 富士山麓自然・生物研究所の蛭田眞平准教授、常磐大学大学院 人間科学研究科の中原 史生教授、独立研究者の斎野 重夫氏、東京農業大学 生物産業学部の宇仁 義和教授、長崎大学大学院 水産・環境科学総合研究科の天野 雅男教授、三重大学 生物資源学部の吉岡 基名誉教授らの研究グループは、北海道に来遊するシャチが、北太平洋で広く見つかっているresident(レジデント)とtransient(トランジェント)という2つのエコタイプに属することを解明しました。
シャチは世界中の海に生息しており、利用するエサなどの生態的特徴や遺伝的な違いを総括して「エコタイプ」という複数のグループに分かれると言われています。特に北太平洋東部では魚食性で主にサケを食べるresidentと、哺乳類を食べるtransient、サメを食べるoffshore(オフショア)という3つのエコタイプに分かれます。日本では、北海道東部の羅臼沖や釧路沖で、毎年シャチが姿を見せますが、「彼らがどのエコタイプに属するシャチなのか」という基本的な情報がありませんでした。観察ベースの情報やミトコンドリアDNAの一部の解析から、哺乳類食性のシャチが存在することはわかっていましたが、魚食性のシャチの捕食行動は観察されておらず、さらにミトコンドリアDNAの部分解析ではresidentとoffshoreの判別が不可能でした。そこで、世界中のシャチでエコタイプ分類に利用されているミトコンドリアゲノム(ミトコンドリアDNAの全長配列)を利用し、北海道東部のシャチのエコタイプ解明に挑みました。本研究では、北海道周辺のシャチ25個体のミトコンドリアゲノムを解読し、北太平洋のシャチの配列と比較しました。その結果、北海道の海に来遊するシャチは、residentとtransientのエコタイプに属することがわかりました。
北海道では、シャチが観光業や水産業などに深く関与し、人とシャチの関わりが深まっています。今回の成果は、北海道のシャチの生態を知ることに繋がり、海洋生態系や人との関係を理解するための重要な一歩となりました。
本研究成果は、2025年12月17日にMarine Mammal Science誌にオンライン掲載されました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202601212777-O1-Jjm9KG4i】
図1.北海道のシャチのエコタイプ
(左上地図の赤色部分は、シャチがよく見られる海域を示しています。)
1.背景
世界中すべての海に生息しているシャチは、生態的な特徴と遺伝系統の違いを総括して、現在10個の「エコタイプ」というグループに分類されています。特に北太平洋東部では、魚食性で主にサケを食べるresidentと、哺乳類を食べるtransient、サメを食べるoffshoreという3つのエコタイプに分かれます。しかし、日本近海は世界中で進むシャチ研究の中で空白地帯となっており、日本のシャチのエコタイプは長らく不明でした。日本では、北海道の羅臼沖と釧路沖で、毎年決まった時期にシャチが見られます。この論文に関わった研究チームの一つで、2009年に発足した北海道シャチ研究大学連合(Uni-HORP)では、これらの地域を中心に、シャチの生態解明に向けた調査を行ってきました。これまでの観察ベースの情報やミトコンドリアDNAの一部の解析から、哺乳類食性のシャチが存在することはわかっていましたが、魚食性のシャチの捕食行動は観察されておらず、さらにミトコンドリアDNAの部分解析ではresidentとoffshoreの判別が不可能でした。そこで本研究では、これまでに国内の複数の研究機関に蓄積されてきた座礁個体の標本も加え、世界中のシャチで解析が進んでいるミトコンドリアゲノムを用いて、遺伝系統から北海道東部のシャチのエコタイプ解明に挑みました。
2.研究手法・成果
北海道のシャチ25個体の組織サンプルからDNAを抽出し、ミトコンドリアDNAにあたる部分を増幅した後、次世代シーケンサーでミトコンドリアDNAの全長配列を読みました。サンプルについては、北海道の海岸に座礁・漂着した個体の収集や洋上での生体サンプル採取により、合計25個体分を集めました。これら25個体のミトコンドリアゲノム配列は、北太平洋全体のシャチのミトコンドリアゲノムと比較し、すでに報告されている3つのエコタイプのうちどれにあたるのか、調べました。また、同じエコタイプに属するシャチ同士でも、ミトコンドリアゲノムにはわずかな塩基配列の違いが見られることがあります。一つ一つの違った配列を「ハプロタイプ」と呼び、地域ごとの遺伝的特徴を捉えることができます。本研究では、北海道のシャチ25個体がどのハプロタイプに属するかについても調べました。
その結果、北海道のシャチがresidentとtransientという2つのエコタイプに属することがわかりました。北太平洋では、これら2つのエコタイプともう一つ、offshoreというエコタイプの存在が知られていますが、本研究のサンプルでoffshoreに属する個体はいませんでした。ハプロタイプについては、residentとtransientでハプロタイプの多様性が大きく違うこともわかりました。シャチの研究が盛んなアメリカやカナダの太平洋側でも同所的にresidentとtransientのシャチが生息しており、それぞれの生態的特徴の違いから両エコタイプを別種として分けようという考えが出てきています。北海道においては、今回、両エコタイプの遺伝系統とその多様性の違いが浮彫になりましたが、今後の継続的な調査で生態的な違いを明らかにしていけば、保全の単位として2つのエコタイプを分けて扱うことになる可能性があります。
3.波及効果,今後の予定
北海道のシャチが持つ2つのエコタイプは、アメリカやカナダの太平洋側で研究が進んでおり、両エコタイプの間には、食性や行動などの生態的な違いが多くあることがわかっています。しかし、同じエコタイプでも地域によって異なった特徴を持っている可能性があるため、アメリカやカナダのシャチについてわかっている知見すべてが、そのまま北海道のシャチにも当てはまるわけではありません。例えば、北海道のresidentについては、食べている魚の種類がアメリカやカナダのシャチとは違うかもしれませんし、それが北海道のシャチ独自の特徴になっているかもしれません。今後も、継続的なシャチの調査・研究を続け、北海道のシャチの生態に関する情報を蓄積していきます。
このようにシャチの生態を明らかにしていくことは、観光業や水産業などの人間活動と深い関わりを持つシャチについて理解を深め、人とシャチが共生していく上でも重要なことです。
4.研究プロジェクトについて
本研究は、READYFOR(https://readyfor.jp/)を通じた寄付、JSPS科研費(JP23220006、JP15H05709、 JP24500326、JP17K00208、JP15K07227、JP21H02217、JP23K21207、JP20H03054、 JP25870008、JP15K20828、JP 16KT0140、JP 21H00962、JP 21KK0106)、JSPS二国間交流事業(JPJSBP 120219902)、W. T. ヨシモト基金、プロ・ナトゥーラ・ファンド助成(第23期、第27期)、国際海洋生物研究所助成金(令和元年度~令和4年度)、京都大学 野生動物研究センター共同研究助成(2022-A-26)、京都大学大学院 理学研究科銀楓ファンド(2023年度)、JST 次世代研究者挑戦的研究プログラム(JPMJSP2110)の助成を受けて実施されました。
<研究者のコメント>
「本研究では、日本のシャチで初めてエコタイプを解明することができました。見つかった2つのエコタイプはすでに太平洋で発見されているものでしたが、両エコタイプの間でミトコンドリアゲノム配列の多様性が大きく違うこともわかりました。シャチの研究が進んでいる海外では、遺伝系統の違いに基づいて分けられたグループごとに、保全管理策を立てているところもあります。しかし、北海道のシャチにおいては、各エコタイプの生態的な違いや保全状況についての情報がまだ不十分です。今後も、行動観察や遺伝解析といった幅広い手法を用いて、より多くの個体から情報を集めていきたいと思います。」(鈴木 百夏)
<論文タイトルと著者>
タイトル:Whole mitochondrial genome analysis of killer whales reveals the presence of resident and transient ecotypes around Hokkaido(ミトコンドリアゲノム解析から北海道周辺のシャチのエコタイプがresidentとtransientであることを解明)
著 者:Momoka Suzuki, Mami Kawai, Takashi Hayakawa, Yuki F. Kita, Yu Sato, Miho Inoue-Murayama, Akira Shiozaki, Shin Nishida, Shimpei F. Hiruta, Hiroshi Ohizumi, Fumio Nakahara, Shigeo Saino, Yoshikazu Uni, Ayaka T. Matsuda, Takashi F. Matsuishi, Yuko Tajima, Masao Amano, Tadasu K. Yamada, Motoi Yoshioka, Yoko Mitani
掲 載 誌:Marine Mammal Science DOI:10.1111/mms.70107
<研究に関するお問い合わせ先>
三谷 曜子(みたに ようこ)
京都大学野生動物研究センター・教授
TEL:075-771-4393 FAX:075-771-4391
E-mail:mitani.yoko.3w@kyoto-u.ac.jp X(Twitter):@Kaiju_Han
<報道に関するお問い合わせ先>
京都大学広報室国際広報班
TEL:075-753-5729 FAX:075-753-2094
E-mail:comms@mail2.adm.kyoto-u.ac.jp
北海道大学社会共創部広報課
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東海大学静岡カレッジオフィス企画広報係
TEL:054-337-0144 FAX:054-337-0915
e-mail : koho-shizuoka@tokai.ac.jp
宮崎大学企画総務部総務広報課
TEL:0985-58-7114 FAX:0985-58-2886
E-mail:kouhou@of.miyazaki-u.ac.jp
昭和医科大学 総務部 総務課 大学広報係
TEL:03-3784-8059
E-mail:press@ofc.showa-u.ac.jp
東京農業大学 学長室企画広報課
TEL:03-5477-2650 FAX:03-5477-2804
E-mail:info@nodai.ac.jp
長崎大学 政策企画部 広報戦略課
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