<いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう>(フジテレビ系)
健気で哀しい高良健吾・有村架純「一億総貧困」に突き落とされる若者群像

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   「なんだなんだ、このタイトルは」とまず思った。だってそうでしょう。恋をしている最中に、遠い将来この恋を思い出して泣くだろうなんて悠長なこと考える? 恋って結果がどうなろうと先のことなど考えず、その瞬間その瞬間が必死なのに。どうもタイトルに引っかかってしまう傾向があるなあ、われながら。

   でも、泣いた。タイトルと違って(?)、恋だけでなく、生きていくことそのものに必死にならざるを得ない若者たちの姿に胸を打たれたのだ。

脇役たちも銀河のように輝く異色「月9」

   月9といえば、おおむね、安定した視聴率が見込める看板役者を男女1人ずつ立てて・・・みたいな作り方が基本だが、これは何人かの若手俳優による若者群像劇である。真面目な若者たちが厳しい現実に立ち向かう姿は、フジテレビ開局55周年記念ドラマとして2014年に放送された「若者たち2014」(2014年7~9月)に近い。

   もちろん、中心となる曽田練を演じる高良健吾の演技力には定評があり、純粋さとそれゆえの狂気を感じさせる彼の透明感は大好きだ。杉原音役の有村架純もぐんぐん成長しつつある若手女優である。高畑充希、西島隆弘、森川葵、坂口健太郎、高橋一生なども、主役の2人を取り巻くという感じではなく、それぞれがみんな光って、全体として銀河のように輝くドラマになっている。

   「恋」といっても、描かれているのはシングルマザーだった母に幼くして死に別れ、遠縁に引き取られて金づるにされるところを逃げ出したヒロイン(有村架純)だったりする。ちょっと「江戸時代か!」という気がしないでもないが、「一億総活躍」ならぬ「一億総貧困」の足音が空耳ではないかもしれない昨今、「そういうこともあるかもしれない」と思えるのが怖い。

被害者がさらに落ちて加害者に・・・「ブラック」のスパイラルおぞましい

   練の働く運送会社のブラックぶりもリアルだ。その中でも、いい加減な仕事をしては練に責任を押し付け、何かにつけて練をいじめる先輩・佐引(高橋一生)が秀逸。屈折した自分にとって、練の純粋さがまぶしいゆえにいじめたくなる。でも、知らず知らずその純粋さに影響されていく自分がうれしくもある、という役どころがぴったり。

   また、5年後、練が働く労働者派遣会社、その名も「スマートリクルーティング」(!)では、街角やネットカフェで行き場のない若者を見つけては「いい仕事があるよ」とだまして時給300円で働かせている。ブラックというより、もはや暗黒だ。被害者だった若者がさらに落ちて加害者に転じてゆくという、麻薬・覚せい剤業界にも似た図式が描かれる。

   音が働く老人介護施設の過酷さも、多分リサーチによって実態を反映しているのだろう。人手不足なのに、音たち現場の介護者は正社員じゃないので、いつも「契約更新なし」の通告におびえていなければならない理不尽さ。

   救いは、庭のある古い家に一人で住む老婦人・静恵(八千草薫)である。花や犬の世話をしてもらうということで、若者たちに自由に出入りを許している。若者たちにとっては、普通に家に帰るみたいに帰って、ご飯を食べたりできる憩いの場となっている。一人住まいは不用心だからと警戒して閉じこもる人が実際には多いのだろうが、本当にこんな風に私心なく開かれた家があったらいいのに、と思う。(月曜日よる9時~)

(カモノ・ハシ)

文   カモノ・ハシ
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