経済再興で中国政府が打つ大バクチ!ゾンビ企業潰しと農民移住・・・失業拡大と農業離れ

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   あす5日(2016年3月)から始まる中国・全国人民代表大会(全人代)では、不採算国有企業(ゾンビ企業)のリストラと消費中心経済への転換という2つの構造改革が最重要議題だ。どちらもかなりの痛みを伴う大改革で、影響は中国国内に留まるまい。

   東北部の黒竜江省双鴨山市に地域最大のゾンビ企業がある。「竜煤グループ」は石炭採取を中心に病院やホテルまで経営する。従業員総数は20万人で、街の「10人のうち9人が関係者」だが、石炭の需要の落ち込みと過剰設備、過剰人員で3年連続の赤字だ。

   中国政府は昨年(2015年)、「ゾンビの整理」を打ち出したが、地方政府は逆に650億円の財政支援を決めて会社存続に動く。従業員も「20万人が失業したら大問題。潰せないさ」とたかをくくる。

政府も面倒見切れなくなった不採算国有企業

   ゾンビ企業潰しのネックは失業対策だ。政府は産業の転換先として「起業」を奨励し、中国版「シリコンバレー」を北京に作った。政府が投資会社に補助金を出して投資を促す。ベンチャー企業、投資会社1800社がひしめく。1年間で新たな起業が450万社というから凄まじい。ただ、設立された会社の平均寿命は3年を切るという。

   富士通総研の柯隆・主席研究員は、「国有企業改革は35年前からいっていることです。中国政府も本心は温存したいのですがが、ここへきてどうにもならなくなっていて、死に体の企業は切る決心をしたということです」という。経済成長率が25年ぶりに7%を切って、政府も本気にならざるを得ないという。鉄鋼、炭鉱など主要産業の失業対策には、政府も1000億人民元(約2兆円)の補助金を出す。

   柯氏「出稼ぎ労働者と違って、地域に住んでいて家族もいる、コネもある。失業が広がるとデモや抗議が広がりやすいからです。いかに事態が深刻かがわかります」

中間層増やして消費経済へ移行

   もう一つの課題の輸出中心から消費中心経済への移行は、社会構造の改革でもある。2年前打ち出した「新型都市化政策」は、都市と農村の中間の200万人規模の都市を各地に作って農民を移住させ、戸籍の格差もなくして、企業で働く中間層の消費拡大を期待するものだ。

   昨年3月の全人代で、李克強首相は農村消費の拡大に「インターネット整備」を打ち出した。「農村の億単位の潜在力を経済の牽引力に」という構想で、急ピッチで「人工都市」が作られている。

   江西省玉山県の人口1500人の農村。商店はなく、買い物には町まで車で2時間。ここに政府支援でネット通販会社の代理店ができた。店に商品はなく、通販商品が見える大型スクリーンとネット端末があるだけだ。若い男性店員が客に代わって注文をさばく。

   子供を抱いたお母さんが「日本製のオムツが欲しいんだけど」という。別の女性はコートの色や形を品定めしている。クレジットも銀行口座もないが、現金を店員に払う。品物は後で届く。「ネットはわからないけど、便利になった。いつでも買える」とお母さんが笑っていた。

   新型都市の建設が進む内陸の貴州省では、農民が移住するビル群が形になっていた。青写真では病院もできる、幼稚園から大学までの一貫教育も整う。2年間で町の人口は70万人になっていた。電子機器メーカーもできて、300人が働いていた。これまでに生まれた雇用は1万2000人、2030年には人口200万人にする計画である。同じ構想の都市は全 国130か所余もあり、各地で有望企業の奪い合いが起こっている。

   移住させられる農民の不安は尽きない。50代の夫婦は「村で暮らしたいが、政府には従わないと」という。農業しか知らない夫婦に仕事は見つかるのか。「企業が欲しいのは若者。年寄りに仕事はない」

   柯氏「都市戸籍で社会保障の格差は縮まるでしょうが、仕事が見つかるかどうか。また、農業から製造業の給料取りになるのがいいのかどうか。農業は近代化が必要で、やめると将来、食糧危機になりかねません」

   中国の農村人口は6億人だ。その3分の1が中間層になっただけで、中程度の国が一つできたくらいのエネルギーと食糧が必要になるだろう。空恐ろしい実験に見え。

*NHKクローズアップ現代(2016年3月3日放送「『新たな成長』は実現できるか~中国経済の行方~」)

ヤンヤン

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