2024年 5月 4日 (土)

運輸

来店不要なのでコロナ禍でも安心!顧客満足度1位のサービスとは?

現状

宅配便めぐってヤマト運輸、日本通運、佐川急便の3社が猛烈な競争

  日本国内の貨物輸送量は1997年度ごろから減少傾向にあり、2001年度は前年比で3.3パーセント、2002年度は同4.3パーセント、それぞれ落ち込んだ。2003年度もマイナス成長になったと見られている。こうした状況を反映して、陸運業界は全体に低成長を強いられている。例外は宅配便だ。宅配便で扱い個数、売り上げともトップのヤマト運輸の2004年9月中間連結決算は、売上高が前年同期比6.1パーセント増、純利益は約2.6倍となった。主力の宅配便の取り扱い個数が同5パーセント増と堅調だったほか、書類や商品カタログを運ぶ「メール便」も大幅に増加し、好決算となった。

  宅配便をめぐっては、物流業界で売り上げトップの日本通運、宅配便ではヤマトにつぐ第二位の佐川急便の3社が猛烈な競争を展開している。とりわけ佐川急便は、無線を使った携帯式の決済端末装置を使って、商品を注文した顧客が受け取りの際にデビッドカードやクレジットカードで代金と配送料を払える「e-コレクト」サービスなどを導入。これにより通信販売業者の扱いを増やして、ヤマトを猛烈に追い上げている。

日本郵政公社とヤマト運輸が対立

  この3社の争いに割って入ろうというのが、日本郵政公社だ。政府は07年4月に公社を純粋持ち株会社と4つの事業会社に分けて民営化する、という基本方針を04年9月に閣議決定した。民営化に備え、公社はさまざまな分野で業務を拡大することを狙っている。04年6月からヤマトと競合する郵便小包「ゆうパック」の扱いをコンビニ2社で始めた。さらに、コンビニ大手のローソンが04年8月、「ゆうパック」の取り扱いを始めると発表した。これに対し、ヤマトは公社の動きは「民業圧迫だ」と反発、東京地裁に公社を提訴するなど、民営化のありかたをめぐって議論を呼んでいる。

JR新宿駅の自動改札機
JR新宿駅の自動改札機

  一方、鉄道の輸送人員はこのところ横ばいか、減少傾向にある。大手私鉄で見ると、少子高齢化の影響もあって、92年度から11年連続で減少している。このため、売り上げも低迷、利益も低水準の会社が多い。これに対しJRは利益面では順調だ。本州にあるJRの東日本東海西日本の3社の04年3月期連結決算は、人件費削減や金利負担の減少で、3社とも当期利益が過去最高を記録した。

歴史

80年代、大手輸送会社はこぞって宅配便に参入

  小口の荷物を、個人の家や会社まで直接運ぶサービスをヤマト運輸が始めたのは1976年1月のことだった。それまでは、個人が小口の荷物を発送するのは大変不便だった。郵便小包か、鉄道を利用した「チッキ」と呼ばれる方法しかなく、郵便局か駅まで自分が出向かないと利用できなかった。「宅急便」と名づけたこの新サービスは、扱い開始とともに急激に伸び、1983年度の扱いは1億個を突破した。1980年代に入ると、大手の輸送会社はこぞってこのサービスに参入、低迷する業界の中で成長分野となった。

  しかし、ヤマトの「宅急便」成長の道のりは決して平坦なものではなかった。ヤマト運輸は扱いエリア拡大のため、80年代初めから運輸省(現国土交通省)に新路線免許を申請したが、却下もされず数年もほっておかれるなど、運輸省の消極的妨害に苦しんだ。参入の壁がなくなったのは、規制緩和が叫ばれ始めた90年代に入ってからだ。

  一方、JR各社の母体は旧国鉄である。巨額の借金を抱えて危機的状況に陥っていた旧国鉄が分割・民営化されたのは、1987年4月で、北海道、東日本、東海、西日本、四国九州の6つの旅客会社と貨物専門会社などが新たに誕生した。旧国鉄時代は赤字がひどく、毎年のように運賃値上げを繰り返していたが、民営化後は東日本、東海、西日本の3社は値上げをしておらず、赤字体質から脱却した形だ。また、国鉄時代頻発したストライキもほとんど行われなくなった。

将来を展望するための3つのポイント

ポイント1
激化する国際競争に勝てるのか

最高時速300キロを出す東海道・山陽新幹線の「のぞみ」500系
最高時速300キロを出す東海道・山陽新幹線の「のぞみ」500系

  世界の物流市場ではグローバル化の動きがめざましい。米国のUPSフェデックスドイツポスト、オランダのTPGが世界のビッグ4と呼ばれ、いずれも航空機数百機を自社で所有し、世界各国に拠点を配置するなど効率的な物流網を確立している。日本は郵政公社、民間企業とも大きく出遅れた形だ。郵政公社は国際市場で生き残るため、中国に初の拠点を開設するほか、海外の巨大企業との提携を模索するなど、国際部門を抜本的に強化する方針だ。国際展開のお手本になるのは、ドイツポスト。同社は海外の物流業者を次々買収、世界2百数十カ国で事業展開している。

ポイント2
サードパーティロジスティクス(3PL)に対応できるか

  運送管理や在庫管理など一貫した物流業務を、荷主から包括的に請け負う新しい形の物流サービス形態を「サードパーティロジスティクス」、略して3PLと呼ぶ。3PL事業者は包括的に物流業務を請け負えるため、効率的なシステムを構築し、輸送先の卸売りや小売主に対して情報を的確、敏速に提供することができる。さらに、物流における環境負荷の低減にもつながるとして期待されている。国内物流業トップの日通は3PL事業強化のため、米国フェデックスと航空貨物で提携したほか、03年11月に住友商事商船三井などと合弁で新会社を設立、博多―上海間の高速海上輸送サービスを開始した。他社も、ニーズが急速に高まりつつあると判断、事業参入に乗り出している。

ポイント3
郵政民営化に伴う摩擦は回避できるのか

  郵政民営化の道のりは依然不透明だ。07年4月に公社を純粋持ち株会社と4つの事業会社に分けて民営化する、という基本方針は決まっているもの、これには「システム開発が間に合うかどうか、専門家が判断する」という条件が付けられている。自民党の中には、これひとつ見ても、まだ民営化が正式に決まったわけではない、として基本方針の修正を求める声は根強い。また、郵政公社は民営化をにらんで、各分野で新規参入や市場拡大を狙っているが、これが民間との摩擦を引き起こしそうだ。税法上の優遇など「官業」の特権を得たまま、民間と同じ土俵で戦うのはおかしい、というのが民間側の理屈で、宅急便をめぐるヤマトとの争いはすでに法廷に持ち込まれている。

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