2024年 4月 29日 (月)

デジタル家電など製造拠点の日本回帰が明瞭に 「中国へ全部渡さない戦略」へ動く

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基幹部品は国内、組み立ては中国

  かつて日本が家電王国として世界に君臨した背景は量産技術だった。しかし今では性能で中国製に並ばれ、価格では日本が圧倒的に不利である。そこで、日本メーカーが量産技術に代わるものとして開発してきたのが、これらのデジタル技術なのである。ブラウン管が薄型ディスプレイになり、VTRがディスクに代わり、通信が高速化することは十数年前から予想されてきた。日本メーカーの努力によって、これらの次世代技術がようやく、消費者に手の届く価格で実用化された。その結果として「デジタル家電ブーム」が起きているとも言える。しかもデジタル家電は、かつての家電とは異なって簡単に海外メーカーにとって代わられることはない。たとえば中国メーカーもDVDプレーヤーを量産している。しかし基幹部品の多くは日本から輸入しなければ組み立てられない。必ず日本に一定の利益をもたらす仕組みなのである。デジタル家電は短期のブームに終わるものではなく、長期的に景気をリードするという見通しの根拠は、ここにある。
日本の家電メーカーの今後の基本戦略は、基幹部品を日本で生産し、量産組み立てを中国で行うことにある。その先鞭をつけたのが、キヤノンである。キヤノンはコピー機などの事務機器の量産工場をいち早く中国に移したことで利益確保に成功した。基幹部品は国内で生産するか、他メーカーから調達している。この戦略をさらに進め、基幹部品の内製化比率を高める。キヤノン同様、国内工場を基幹部品に集中するケースはいくつもある。これは、「中国に勝つ」のではなく、「中国に全部を渡さない」ための戦略のひとつである。

  ただ、最近はそこから一歩踏む出し、「モノつくり」技術の維持という色彩が強まっている。 国内ならば、開発と一体の生産ができ、重要部品や設備を自社で作る「内製化」もしやすい。国内外に分散した生産現場を集中させる効率化も可能だ。逆に言うと、デジタル家電という製品でさえ、製造を海外頼みにすると、肝心の開発競争力も失われかねない、という考えが出てきたからだ。国内回帰の動きから、今後の日本のモノ作り現場の方向性が見えてくる。

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