2024年 4月 26日 (金)

「市民が主役」オーマイニュース 読まれるのは「プロ記事」ばかり?

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   発足から1年余りが経過した、市民記者によるニュースサイト「オーマイニュース」だが、内部で激しい議論が起きている。「なぜ市民記者は辞めてしまうのか」という長文記事が掲載され、サイトに掲載されている記事の4分の1が市民記者以外による投稿で、市民記者の「実働」は3%程度に過ぎないことを暴露したからだ。編集部側は「不正確」と反論したものの、市民記者という制度を運用することの難しさが浮き彫りになりつつある。

記事の4分の1が、プロライターによる「編集部発」

「編集委員制度」の導入はオ・ヨンホ代表の意向だという
「編集委員制度」の導入はオ・ヨンホ代表の意向だという

   オーマイニュースは2007年8月28日、日本版創刊1周年を記念するシンポジウムを開き、その中で市民記者によるパネルディスカッション「1年目─私はこうして参加した!」も開かれ、市民記者としてのやりがいや、何故市民記者として活動しているかなどについて意見交換が行われた。これと同時期に、ある市民記者が「それでも私がオーマイニュースに期待する理由」というタイトルの、オーマイニュースのあり方について問題提起する記事を掲載した。

   (1)国民投票法案に反対する趣旨の記事が大々的に掲載され、メディアとして中立でない(2) 投稿から1週間以上「保留状態」にされて記事が掲載されなかった(3)市民記者ではない「プロライター」による記事が増えているのではないか、などと訴える記事だ。

   およそ1ヶ月後に、同じ記者によって「なぜ市民記者は辞めてしまうのか」という長文記事が掲載され、波紋が広がっている。記事では、オーマイニュース編集部から提供されたデータをもとに、市民記者の活動状況を分析しているのだ。それによると、掲載されている記事の4分の1が、編集部員か編集部が依頼したプロライターによる「編集部発」のもので、トップ記事として掲載される「編集部発」の記事に割合はさらに上がって、実に44.4%。さらに特筆すべきは、市民記者登録総数は3,682名なのに対して(8月14日現在)、8月11日~9月10日の1ヶ月間に1度でも記事を書いたことのある市民記者は110人。「実働率は3%」と指摘しているのだ。もっとも、編集部側は「1ヶ月間のデータであるため、不正確。1ヶ月間で母集団全体が稼動することはありえない」と反論している。

   そして、記事では、「元市民記者」へのインタビューも交えており、編集部から記事を修正されることへの反発を紹介している。

   この記事には、60近い、比較的長文のコメントが付けられ、

「素晴らしい分析」
「久々に読みごたえのある記事に出会いました」

といった声とともに、市民記者としての危機感を共有する声が相次いだ。

   コメントの中には、編集部からの「答弁」とみられるものもあり、「編集部発記事」について

「ニュースサイトとして『その日当日の感覚』を補うものとして、現時点では、避けられません」

と釈明するとともに、

「『その日感覚』『その時間感覚』のある市民記者の記事が増えれば、それがトップに座る比率は高まるはずです」

と、今後の見通しを示している。

   編集部側も、反論を試みている。9月28日には、「プロ記者」による「『なぜ市民記者は辞めてしまうのか』への異論」という記事が掲載され、(1)「(実働)記者数110人」というのは週刊誌編集部並の規模だ(2)編集部発の記事がなくなれば、読者の幅はさらに狭まり、「記事を書いてみたい」という人も少なくなってしまう、といった反論が展開されている。
   平野日出木編集次長へのインタビューもあり、

「市民記者の記事がオピニオン主体であれば、プロの方にはファクト中心のストレートニュース。市民記者の記事が『テール』ならば、プロの方には『ヘッド』」

と、市民記者とプロ記者の位置づけについての認識を示している。

「編集部発」の記事が増えているのは元木編集長の方針

   平野氏自身も10月3日になって「そんなに単純ですか?市民記者が辞める理由って」という「続報」を掲載、「編集部批判のメッセージはしっかり受け止めます」としながらも、市民記者の稼働率については、ログインしている記者数で計算すると

「(編集部を批判している記事で用いられているのと)同じ母数を使っても、稼動は9~12%となり、印象は変わってきます」

と反論している。

   もっとも、紙面活性化に向けての新たな動きもある。オーマイニュースの改善・発展に協力する「市民記者編集委員」なる制度が導入されたのだ。07年9月に6人が選出され、任期は3ヶ月。先述の問題提起記事を書いたのも「編集委員」だ。サイトのトップページには「市民記者編集委員コーナー」が設けられ、各編集委員による「オーマイニュース論」が展開されている。

   ただ、この制度導入についての不安要素もなくはない。元木昌彦編集長は、07年7月下旬に行われた市民記者との会合で、編集委員の選出プロセスについて問われ、このように答えているのだ。

「韓国の編集委員制度を日本に導入すると言う(呉連鎬)代表の意向なのだけれど、選ぶのはムツカシイと言ったのですが。それで第1回はとりあえずこれ(編注: 「月間市民記者賞」の受賞者から選ぶ)でお願いしようと思います」

   受け取り方によっては、「韓国から言われたので」と、消極的に導入された、との見方も出来そうだ。

   オーマイニュース編集部では、J-CASTニュースに対して、「編集部発」の記事が増えているのは元木編集長の方針であることを明らかにしたうえで、

「ただし、市民記者の記事を増やせるようにこれからも努力して参ります」

とコメント。今後の元木編集長の舵取りが注目されるところだ。

   現状では市民記者と編集部との温度差は相当大きそうだが、編集部を批判する記事が編集部のチェックを通ってサイトに掲載されているあたり、まだ議論の場としての機能は果たしていると言えそうだ。

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