動画投稿サイト「ユーチューブ(YouTube)」に投稿された日本の捕鯨をめぐる動画がネット上で大きな波紋を呼んでいる。日本の調査捕鯨に対して豪州政府が猛反発している事態を痛烈に批判する内容。豪州での「人種差別」や「動物虐殺」を例に挙げた刺激的な動画に、日本語のみならず英語での書き込みが動画のコメント欄に1万件以上書き込まれる「大論争」を巻き起こしている。さらに、この事態に豪州政府の外相がコメントする事態にまで発展しているのだ。ディンゴやカンガルーの虐殺映像が盛り込まれる捕鯨問題で豪州を批判した動画が大きな波紋を呼んでいる「豪州人は排外主義を煽るために鯨をつかってはいけない」「人種差別を正当化するために鯨を使ってはいけない」「豪州人は日本人への偏見と差別を捨てなければならない」こんな英語と日本語のメッセージが音楽と映像とともに表示される動画が2007年12月末に動画投稿サイト「ユーチューブ(YouTube)」にアップされた。動画の内容は、日本の調査捕鯨に猛烈に反発する豪州政府の方針などを痛烈に批判するもので、豪州での人種差別暴動やディンゴやカンガルーといった動物の虐殺映像を使って、豪州人が持つ日本人や捕鯨への「差別」を克明に描いたものだ。そこでは、人種差別運動の様子、殺されるディンゴ、白人男性がカンガルーの母親のお腹の袋から赤ちゃんカンガルーを取り出して足で踏みつぶす様子、さらには「鯨のフルコース」を注文した日本人男性が銛で刺し殺されるCMなどが流され、「次の犠牲者は日本人ですか?」「豪州は最も多くの動物を殺す国だ」「カンガルー殺しは残酷じゃないの?」といったメッセージが添えられている。この動画は2008年1月8日夕方までに23万回以上再生され、動画のコメント欄には1万件を超える日本語・英語のコメントが書き込まれる「大炎上」の事態にまで発展している。コメントがこれほど大量に書き込まれるのはユーチューブでは異例の事態。コメント欄に書き込まれた英語の書き込みには、「ジャップ(Japs)はキモいマンガとかアニメで"自分イメージ"を良く見せるよな。でも今回は失敗なんじゃないか」「ビデオはぽんこつだ。誤りと一般化でいっぱい。こんなゴミみたいなことを信じちゃう奴がどんなことを考えているのか知りたいもんだ」「どうやってこんなプロパガンダ作ったんだ。製作者こそ人種差別主義者だ」「あ~汚れたジャップ・・・」「鯨は世界で最も美しく価値ある動物で、子孫がその美しさを見るためにも保護すべきなんだよ。だからカンガルーと比べんな・・・黙りやがれ、ジャップはこんな議論する権利はないんだ」といったこの動画や捕鯨を批判するものが多くある。豪州メディアと政府関係者も敏感な反応一方、日本人と思われるユーザーからは「豪州政府にIQテストを実施する必要がある」「これは良くできた動画ですね。すばらしい。」といったコメントが書き込まれている。真面目な議論もあるが、なかには日本語、英語の罵詈雑言風のものも飛び交っている。豪州では、日本の調査捕鯨に強硬に異議を唱えていた労働党が政権を取り、日本が行う調査捕鯨を監視させるために軍を出動させる可能性も豪州政府の閣僚などから公言されている。豪州で高まる「反捕鯨熱」もあって、まさに日豪サイバーバトルの様相を呈している。この動画にことさら敏感に反応したのは豪州メディアと豪州政府関係者だ。1月7日の豪デイリーテレグラフ(電子版)はユーチューブに掲載された動画を「オーストラリアの人種差別者と日本の捕鯨支持者」と題して報じ、「豪州政府を脅して捕鯨反対の立場を変えさせられると考えるのは全くの間違いだ」とする豪州政府スポークスマンのコメントを紹介。また同日の豪ABCニュース(AustralianBroadcastingCorporation)は、「捕鯨推進者のビデオが"差別主義者"キャンペーンで攻撃」と題して、この動画を批判的に報じた。同局は、ディンゴ協会長の「我々は捕鯨はどんなことがあっても容認できない立場」「捕鯨推進者の都合のいいように(ディンゴ保護活動家がディンゴ虐殺を批判する)コメントが使われた」といったコメントを紹介。さらに、捕鯨反対の立場のスティーブン・スミス外相の「このビデオで、我々の強固な捕鯨反対の立場が変わることはない。豪州政府は固い信念は変わらないし、豪州国民もまた、こんなもので尻込みすることはないと信じている」というコメントまで紹介している。たった1つの動画が豪州に与えた影響は小さくはないようだ。
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