2024年 4月 26日 (金)

枝川二郎の「マネーの虎」
米国中産階級の暮らし 日本よりぐんと豊かなのはなぜか

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   アメリカ北西部のシアトルに来ている。日本ではマリナーズのイチローで有名な街だが、経済ではマイクロソフト、ボーイング、アマゾン、スターバックス、コストコなど多くの企業を輩出したことでも知られる。アメリカが全国的に不景気にあえいでいるなかで、シアトルの状況は比較的良く、街にはまだまだ活気がある。

普通のサラリーマンが庭でバーベキュー、湖で自家用ボート

   こちらに来て強く感じることは、アメリカの中産階級の暮らしぶりが豊かなこと。日米でサラリーマンの収入にそれほど大きな差はないが、生活レベルではアメリカのほうがずっと豊かであり、それが人々の精神的な余裕にもつながっている。

   当地では年収数百万円の普通のサラリーマン家庭が広い家に住み、庭でバーベキューを楽しみ、休日には自家用ボートで湖に繰り出す、というのが普通の光景となっている。

   その違いが生まれる大きな原因は、資産運用の成果の違いによる。日本ではまともな資産運用というものは存在しない。1990年のバブル経済のピークから20年近く経ったが、いまだにバブル崩壊の重しがとれていない。株価はピークの数分の1のレベルにとどまっているし、不動産価格も長期的には下落傾向だ。つまり、今までに少しでも「積極的」な運用を心掛けた人の大半は損をしたというわけ。一方で、預金金利は限りなくゼロに近く、タンス預金と変わりないのだから、どちらにしても資産が減ることはあっても増えることはまずない、という状況だ。

   とくに住宅への投資が最も悲惨な状況だ。わが国の住宅は一般に安普請なので、新築で家を建ててもローンを返済し終えるころには建て直しが必要になる。家の金銭的価値はゼロになるということだ。これでは資産形成どころか資産消滅である。あるいは、住宅は「資産」ではなく「消費財」である、と言ってもよいだろう。政府も遅ればせながら200年間住める住宅を、などという掛け声は上げているが、築数十年の家に対しては銀行がまず融資をしてくれないし、「安普請でも新築を好む」という(海外では理解されない)見方が日本では相変わらず主流だから、現状は容易には変わらないだろう。

日本では一生涯、資産が形成されることがない

   それに対してアメリカの家は、100年はもつし、古い家こそ価値が高いという見方が一般化している。だから、家には当然のように資産価値が生まれる。アメリカの典型的なサラリーマンは、30歳代のころに子育てのために住宅ローンを組んで庭付きの一戸建てを購入する。そして子育てを終えた50歳代に狭い家に買い換える。そこで手にした差額が老後の大事な資金源となる。いまは不動産市況が悪化しているが、それでも日本のように、建物の価値がゼロになるといったケースは少ない。

   日本にはそれなりの企業で定年まで勤め上げても定年後の年金生活では、文字どおり年金以外の収入がほとんどない人が多くいる。これは何十年間も給与所得を得ても、それが資産へ変貌して果実を生むというふうにならないためだ。退職金が住宅関係の費用や子供への援助で消えてしまう、というのも追い討ちをかける。結果として一生涯、資産が形成されることがない。生命保険だけは多額にかけている人も多いが、死んだ後にいくら金をもらっても遅いだろう…。

   この問題は今後も追及していく予定だが、今回はこの辺で。


++ 枝川二郎プロフィール
枝川二郎(えだがわ じろう)国際金融アナリスト
大手外資系証券でアナリストとして勤務。米国ニューヨークで国際金融の最前線で活躍。金融・経済のみならず政治、外交、文化などにもアンテナを張り巡らせて、世界の動きをウォッチ。その鋭い分析力と情報収集力には定評がある。


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