2024年 5月 7日 (火)

テレビ局はコンテンツ、通信会社はインフラ 分業でビジネスチャンス広がる
(連載「テレビ崩壊」第3回/山田肇教授に聞く)

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電波オークション制度導入すべきだ

――キー局にもメリットはありますか。

山田 あります。不況の影響で広告が落ち込む中、過去のコンテンツの2次利用として、ネット有料配信を生かすべきでしょう。ドラマのDVD化や映画化、グッズ販売などに加えて取り組めばいい。今もネット有料配信は始めてはいますが中途半端です。また、アメリカの映画産業のようなシステム構築も必要です。映画公開の後は、DVDで儲け、その後は有料テレビに売って、さらにその後に無料放送で流す。これなら十分に儲けているので無料放送の映像をネットに公開されても、それほど目くじらたてなくてもいい訳です。テレビドラマでも同様の流れを構築できるはずです。「映画公開」にあたる最初の放送ではコピー防止をし、無料再放送では防止措置をはずしてもいいでしょう。

――テレビ局の電波利用については、2008年に著名な自民党衆院議員が「テレビ局が払う電波料は安すぎる」とブログなどで指摘したり、民主党の「政策集INDEX2009」で、欧米で行われている電波(周波数)オークション制度導入が盛り込まれたりしています。携帯電話会社からの不満もあります。テレビ局は保護され過ぎなのでしょうか。

山田 テレビ局の電波利用料は、私も安すぎると思います。前にも指摘したように、一瞬で何百万人にも向けた情報を送ることができるビジネスを保証されていることを考えると、34億円強という今の負担では、1ケタは安い。
   私はオークション導入賛成です。ただこう言うと、携帯電話会社やテレビ局の今の割り当てを召し上げてオークションでやり直せと言っていると誤解されることがあります。私は、オークションはデジタル化後の空き周波数などを対象に段階的に導入するべきだと考えています。また、ある1チャンネルが中継局用にある特定地域でしか使われず、ほかの地域では「空いている」状態であれば他の用途に共用すべきです。こうした「テレビ帯の周波数共用技術」は各地で実験が行われ、実用化の一歩手前まできています。
   イメージとしては、例えば渋谷エリアだけに届く情報をワンセグやデジタルサイネージ(電子看板)で見る、といった形です。私はこれをコミュニティTVと呼んでいて、地域に特化した広告需要が見込まれます。これには新規参入できるし、テレビ局が出資したり人を派遣したりするのもいいでしょう。
   テレビは電波から出て行け、とでもいうような議論もありますが、私には極論に聞こえます。とはいえ、例えば県域免許制などは、国による過保護で、むしろ新たなビジネスチャンスを阻害していると考えています。

山田肇さん プロフィール

   やまだ はじめ 東洋大学教授。1952年生まれ。慶応大学工学部卒、同大大学院工学研究科修士課程修了。同大工学博士。マサチューセッツ工科大学技術経営修士。76年、現NTTに入社、研究戦略立案などに携わる。2002年から東洋大学経済学部教授。内閣府の「電子政府ガイドライン作成検討会ユーザビリティ分科会」主査など政府関係の役職も歴任。著書に「標準化戦争への理論武装」「技術経営 未来をイノベートする」などがある。

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