2024年 4月 27日 (土)

吉本興業非上場化 一部には企業体質危ぶむ声も

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   在京民放5社とソフトバンク、電通など13社が特定目的会社「クオンタム・エンターテイメント」を設立し、お笑いの吉本興業の全株取得に向け、2009年9月14日から株式公開買い付け(TOB)を開始した。今回のTOBは放送、通信、広告など大手民間企業主導で吉本興業を非上場化して手中に収め、経営の自由度を高めるのが狙いだ。一時は民放各局などの資金的な事情から、TOBの実施が危ぶまれたが、ソフトバンクなど広範な企業を巻き込み、大手銀行の融資も取り付けることで、実施に漕ぎ着けた。

吉本興業トップと親交ある出井伸之氏が旗振り

   しかし、大手銀行の間には「これまでも吉本興業は暴力団との関係や不明朗な資金の流れなど闇の世界とのつながりを指摘されている。非上場になったら、市場の監視の目が届かず、やりたい放題になってしまうのではないか」と危惧する声が早くも出ている。TOBは発行済株式総数の70%以上の取得を目指すなどハードルが高く、成否が注目される。

   今回のTOBには吉本興業や創業家も賛同している。クオンタム・エンターテイメントの社長は、元ソニー会長で、現在は投資ファンド「クオンタム・リープ」を率いる出井伸之氏が務める。出井氏は民放など13社による吉本興業買収を主導することについて「私はエンターテイメント産業に前職からかかわりが深かった。吉本興業のトップと親交があり、メディア関連の企業とも関連が深かった。創業100年の吉本興業をエンターテイメント産業として再定義するよいチャンスととらえた」と説明。TOBによる上場廃止は「マネージメント的な判断」という。

   マスコミでも報じられたが、今回の吉本興業のTOBは複雑だ。まず、クオンタム・エンターテイメントは吉本興業を買収するために設立した会社で、正確には13社と投資ファンドが240億円を出資。吉本興業株をTOB価格1350円で全株取得するには506億円が必要で、三井住友銀行、住友信託銀行、みずほ銀行から300億円を借り入れる。クオンタム社が全株を取得し、吉本興業を完全子会社とした後は、これを吸収合併し、新生・吉本興業が誕生するという。

買収側の企業も当初予定を下回る13社にとどまる

   在京キー局やソフトバンクなどから見ると、吉本興業を支配下に置くことで、お笑いのコンテンツを有効活用できるメリットがある。テレビのバラエティー番組などに吉本興業の芸人は欠かせず、東京でもこれまで以上にテレビやケータイのサイトに吉本興業の露出度が高まることだろう。

   気になるのは、今回の銀行融資に三菱東京UFJ銀行や、りそな銀行が参画せず、買収側の企業も当初予定を下回る13社にとどまったことだ。冒頭に述べたように、金融機関の一部には、吉本興業の企業体質や非上場化に慎重もしくは懸念を表明するところがあるのは事実。通信会社も今回はソフトバンクだけで、事前に名前が報じられたKDDIなどは参加を見送った。放送局も在京キー局5社のみで、地元の在阪準キー局はひとつも参加しなかった。これらの事実は、今回のTOB、強いては吉本興業の非上場に対する各社の見方を示しているのかもしれない。

   TOBは10月29日までの長丁場。通常、TOBは20営業日行われるが、今回は株主に対して応募期間を30営業日と長く確保した形だ。TOBの成立目標も一般的には51%以上が多いが、今回は70%以上と高めに設定している。出井社長は「TOBの成立を確信している」と述べているが、果たして7割以上の株主がTOBに応じるのか。いずれにせよ、今後の吉本興業の動きから目が離せそうにない。

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