2024年 4月 29日 (月)

高橋洋一の民主党ウォッチ
民主連立政権の2次補正 期待できないこれだけの理由

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   亀井静香・国民新党代表(金融・郵政改革担当相)が吠えた。2次補正予算政府案を小ぶりでまとめたい民主案へ増額を求めていた。普天間問題でも社民党に揺さぶられている鳩山政権であるが、景気対策で国民新党に「上積み」で押し切られる形となって鳩山総理のリーダーシップにかげりがみられている。

   とはいうものの、日本の景気対策がお寒い状態なのは間違いない。内閣府によれば、今2009年度7-9月期のGDP上昇を織り込んでも、日本経済には、GDPの約7%、35兆円にのぼる、総需要と総供給との間の大きなGDPギャップがある。このようなGDPギャップがあると、高い失業率とデフレに悩まされることになる。

需給のGDPギャップ35兆円

OECDが2009年11月19日に発表した「エコノミック アウトルックNO.86 記者会見用資料」から。
OECDが2009年11月19日に発表した「エコノミック アウトルックNO.86 記者会見用資料」から。

   GDPギャップと失業率の関係は、オーカンの法則(Okun's Law)として知られており、日本経済でみれば、35兆円のGDPギャップは失業率を2~3%程度、失業者を130~200万人程度増やしている。特に、労働者を正規雇用と非正規雇用に分けると、非正規雇用のほうが大きな打撃を受ける。また新規雇用で採用ストップになるなど、労働者の間の格差を大きくする。アルバイトの採用停止や就業時間制限、高校・大学新卒者の就職内定率の低下などという形で一部の地域では顕在化しつつある。

   また、デフレとは、物価指数が2年連続して下がるというのが、国際社会での常識だ。モノの値段が下がるというと喜ぶ人がいるが、それは自分の給料は同じか上がると思っているからだ。ところが、デフレになると、たしかにモノの値段が下がるのだが、多くのモノの値段が下がるので、多くの人の給料も下がることになる。デフレがいいとの話は、「相対価格」と「一般価格水準」の混同であり、デフレとは「一般物価水準」の低下であるので経済に悪影響となる。これは01年の政府の経済財政白書に書かれている。

   こうした失業をなくし、デフレから脱却するために、一刻も早くGDPギャップをなくすような政府・日銀によるマクロ経済政策(財政・金融政策)が必要だ。海外でもこうしたマクロ経済政策の役割はよく認識されており、例えば、アメリカでは経済危機後、GDPギャップは10%を超えていたが、まずGDPの5%程度の財政出動によって、09年で5%程度と日本より改善している。

高い失業率とデフレ圧力は長引く

   さらに、FRB(連邦準備理事会)が行った「信用緩和策」(民間の社債、CPなどをFRBが買い取るなど、かつて行われた日銀の量的緩和をさらに強化した非伝統的な金融政策)によって、試算によればGDPギャップを将来にわたって8%程度改善できる効果がある。したがって、アメリカは大きなGDPギャップを財政・金融政策によって完全に穴埋めしている状態だ。ヨーロッパ諸国も同様に、財政政策と金融政策によって、金融危機のGDPギャップをほぼ埋めている。

   日本はどうなのか。麻生自民党時代に、国際的には財政支出はGDP2%程度だといって、たしかに補正予算を通して14兆円の景気対策を行った。しかし、金融政策はほとんど行わなかった。その結果、今でもGDPギャップは世界最悪の部類になっている。先月来日したガリアOECD事務局長は、菅直人副総理・経済相に会って、日本はGDPギャップが大きくデフレになっているので、日銀はデフレと闘うべきだと進言した。写真に示した図は、最近のOECDサイトに掲載されたもので、中央銀行のバランスシートを示している。図右側の08年途中から09年の箇所を見ると、アメリカとユーロ圏に比べ、いかに日銀が金融緩和策を怠っていたかがわかる。

   先週、日銀の打ち出した政策で一時株式市場は回復したかのようだが、白川日銀総裁のいう「広い意味での量的緩和」という表現はミスリーディングで、実態は日銀が10月末に行った「12月末でのCP、社債買い取り中止、来年3月末での企業支援打ち切り」を復活させた程度である。

   財政政策でも2次補正で連立政権の間でもたつき、結局7.2兆円規模で決まったが、真水ベースでは4兆円程度の話だ。金融政策がほぼゼロ回答であることから、GDPギャップ35兆円を埋めるのはほど遠い状態だ。となると、GDPギャップは当分なくならず、高い失業率とデフレ圧力は長引くだろう。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。著書に「さらば財務省!」、「日本は財政危機ではない!」、「恐慌は日本の大チャンス」(いずれも講談社)など。


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