「ケータイ世代」消費の変化 古いものが見直される?
インタビュー「消費崩壊 若者はなぜモノを買わないのか」第5回/原田曜平氏に聞く
2010.05.05 18:00
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実家が東京にあるのに「ルームシェア」する
――若者消費の変化はほかにもあります。
原田 実家が東京にあるのに「ルームシェア」する若者が増えている、と知り合いの社長から聞きました。青山や六本木といった便利な場所にあり、個室のほかに共同の風呂とトイレに共有スペースがついて月額賃料10~15万円と結構高い。1人暮らしもできる値段ですから、昔のようにお金がなくてシェアするんじゃなく、なんとなく人の気配が欲しいという感じなんです。
もっとも、バスタブは海外によくある猫足のタイプにしたり、女優さんが使うような豪華な「女優ミラー」をつけたり、と随所に工夫がされています。1人暮らしではなかなかできない経験ができるのもうけているみたいです。
――注目している新傾向はなんですか。
原田 東京・下町の谷中銀座に休日に行ってみてください。若者であふれているんです。巣鴨の地蔵通りでも、夕方6時を過ぎると何人も集まっています。若者と縁遠いはずのこうした場所がなぜ注目されているのか、というのが大事です。上の世代はこれを「レトロブームだ」と思ってしまいますが、そうでしょうか。国が成熟してモノが溢れている今、若者はフラットに物事を見て「いい」と思うものは取り入れていきます。だから、古いと思われているものの中からこれから見直されるものが出てくると思います。例えば銭湯です。最近都内で温泉が人気なのをみると、復活の可能性がありますね。これも同じ現象です。
――若者にモノを売るには、過去にヒントがある?
原田 と言っても、ただ過去に戻すのではダメです。都内の温泉にしても昔より大きな風呂になって、プールやジムをつけたりしています。どこかをアレンジして新しいサービスにしてくのがポイントです。ルームシェアや温泉、巣鴨のケースのほかにも同じような事例がどんどん出てきているし、これからも出てくると思いますよ。若い人の感覚をどれだけ取り込んでいけるか、それが大切だと思います。
原田曜平(はらだ・ようへい)プロフィール
博報堂若者生活研究室アナリスト。1977年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂に入社。博報堂生活総合研究所時代にJAAA広告賞・新人部門を受賞。専門は若者研究。