2024年 4月 29日 (月)

「JANJAN」選挙DBを「盗用」? 新サイトにデータ削除求める

   全国で行われた選挙の結果を集めたウェブ上のデータベース「ザ・選挙」をめぐり、「盗作」問題が持ち上がっている。ニュースサイト「JANJAN」で知られていた日本インターネット新聞社(東京都千代田区)が運営していたが、同社の経営難のため、ほとんど更新されない状態が続いていた。その後、「ザ・選挙」の内容と酷似したサイトが登場、JANJAN側は「盗用」だとして、データの削除を求めるとともに、法的措置も検討するとしている。

   JANJANの「ザ・選挙」は2006年7月に開設された。各選管発表のデータをもとに、国政選挙(衆院選・参院選)と全国すべての地方選挙(都道府県、市区町村の首長選と議員選)の立候補者情報や選挙結果が網羅されているのが特徴だ。現職約5万人を含む約20万人分の候補者情報が収録されている。元三重県知事で早大大学院教授の北川正恭氏が所長を務める「早稲田大学マニフェスト研究所」(マニ研)も、サイトの運営に協力してきた。

北川・早大大学院教授が新サイトに協力

JANJAN側が「盗用」だと主張している「リアルポリティクスジャパン」(RPJ)
JANJAN側が「盗用」だと主張している「リアルポリティクスジャパン」(RPJ)

   JANJANが2010年3月末にサイトを休止し、「ザ・選挙」も、10年7月11日投開票の参院選を除くと、サイトの更新ができない状態が続いている。JANJANではサイトの存続を目指して、「引き受け先」を探していたが、データの更新には年に数千万円がかかるため、それも難航していた。

   ところが、11月1日にオープンした政治サイト「リアルポリティクスジャパン」(RPJ)の選挙情報の大半が、「ザ・選挙」のものを盗用したものだとして、JANJAN側がサイトを削除するように求めていることが分かった。

   「ザ・選挙」には、「当選挙区支部長」(正しくは「党選挙区支部長」)、「国際学院埼玉短期大学客教授」(正しくは「国際学院埼玉短期大学客員教授」)といった誤植がある。これら複数の誤植が、そっくりそのままRPJにも反映されていることなどを、JANJAN側は盗用の根拠として挙げている。

   それ以外にも、サイトの構成や内容が酷似しているとして、JANJAN側は「ザ・選挙」の内容の98%がRPJに盗用されたと指摘。JANJAN側は、11月19日付けで、データの削除と謝罪文の掲載を求める警告書をRPJの運営会社「PMラボ」(東京都港区)に送っている。

   なお、「マニ研」のサイトのトップページには、「早稲田大学マニフェスト研究所が全面協力!!」とうたって、RPJへのリンクが張られており、RPJには、北川氏の

「日本インターネット新聞社の『JANJAN(ジャンジャン)』が日本ではじめて選挙情報サイトを開設して、全国に情報発信してきましたが、この度、新たにPMラボがこの考え方を受け継いだ形で選挙情報サイトを立ち上げ、発信することになりました」

という推薦文も掲載され、マニ研とRPJの緊密さがうかがえる。ただ、JANJAN側の抗議後、この文章は削除された。

   JANJAN側と、PMラボとは「全く面識がない」という訳ではない。JANJAN側が「引き受け先」の一つとして視野に入れていたのがマニ研で、参院選直後の7月15日に、JANJANの竹内謙社長と北川氏が話し合いの場を持っている。この席に同席していたのが、PMラボ代表の小林温氏だ。

「削除も含めて適当な対応を検討している最中」

   マニ研の説明によると、参院選向けに作成したサイト「e国政」を、マニ研・PMラボ・ニコニコ動画の3者で運営した関係から、北川氏が小林氏を竹内社長に紹介した形だ。

   ただ、竹内氏は、「PMラボとの業務提携は断る」と北川氏に伝えたと主張する。一方で、マニ研側は

「『マニ研とやるのはいいけど、PMラボとはいやだ』との発言はあったが、(「ザ・選挙」存続に関する、マニ研との)提携自体を断ったかどうかは、ニュアンス的に非常に微妙だ」

と話しており、両者の間の認識の違いは大きい。

   PMラボの代表を務めるのは、元参院議員の小林温氏。小林氏は07年7月の参院選で神奈川選挙区から出馬・当選したが、直後に出納責任者の女性が公職選挙法違反(日当買収)の疑いで逮捕された。この責任を取る形で、小林氏は07年9月に議員辞職している。出納責任者の女性に対しては、08年6月には最高裁が上告を棄却し、懲役1年2月、執行猶予5年の判決が確定している。このことから、小林氏が連座制不適用の訴訟を起こし、勝訴しないと、小林氏は参院神奈川選挙区から5年間は立候補できなくなってしまう。

   竹内氏は、このような背景を嫌って、PMラボとの提携を断ったと説明している。

   マニ研では、

「我々に全く悪意はなく、善意でやっている。広告も入れていないし、PMラボとマニ研が運営費用を出している。まったくの赤字。『ザ・選挙』の更新が滞っているなか、地方議員からは『中途半端な情報が載っているのは困る』というクレームもマニ研に寄せられていた。そんな状況で、『続ける意味はあるのか』という声もあったが、『ザ・選挙』は社会的なインフラだとの面もあるので、『閉めるのか閉めないのか良く分からない』という状態よりは、2011年春の統一地方選を念頭に、『とりあえず、できるところまでやってみよう』ということになった」

と説明。さらに、

「マニ研にJANJANからクレームが来ている訳ではないので、答えにくい部分がある。直接言っていただければ、誠実に対応する」

とも話している。また、RPJ編集部では、

「本件につきましては、現在、事実関係の確認も含め、双方の弁護士で話し合いをさせていただいているところです。削除も含めて適当な対応を検討している最中でございます」

とコメントしている。

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