2024年 4月 27日 (土)

EVベンチャー・ゼロスポーツ破たん 「技術力だけで生きられない」裏事情

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   電気自動車(EV)ベンチャーのゼロスポーツが突然、事業を停止した。きっかけはEV集配車を納入するはずだった日本郵便が「納期の遅れ」を理由に契約を解除したからだ。負債総額は11億7700万円。従業員約70人は2011年3月1日付でほぼ全員が解雇された。3月4日に自己破産を申請する予定で準備を進めている。

   両社は2010年8月に契約を結んだ。1000台という過去に例のない大型受注で、EVカーは参入障壁が低く、大手メーカーでなくても受注できることを印象づけた。

   創業者で社長の中島徳至氏は、10年12月に「ほんとうのエコカーをつくろう」(日経BP社)を出版したばかり。そこではEVカーの将来性について語っている。

「ベース車両」の仕様変更で納期遅れ?

   日本郵便は2009年から、三菱自動車や富士重工業、そしてゼロスポーツに、EV集配車を試験的に納入させた。価格や性能を比較し、11年度分のほぼ全部にあたる1000台を、ゼロスポーツに決定。契約価格は約35億円とされる。

   ゼロスポーツのEVカーは、約8時間の充電で100キロメートル以上走り、価格は大手の2~3割安い。富士重工などの軽貨物車両をベースにリチウムイオン電池やモーターなどの部品を国内で調達して組み立て、自治体向けなどに納入する実績をもつ。

   今回、契約解除に至る原因は、EV集配車のベースとなる車両の仕様変更をめぐって起こった。ゼロスポーツの中島社長は、日本郵便が主張する「納期の遅れ」について「日本郵便側の車両の仕様変更に応じたのが原因」と説明する。契約解除をきっかけに融資を受けていた金融機関から返済を求められ、事業停止に追い込まれた。

   一方、日本郵便は「仕様変更を申し入れたことはない」と断言する。ただ、日本郵便の業績悪化も背景にあるともみられている。そもそもEV集配車の導入は「赤字の事業会社がいま推し進めることではない」との批判が内部からもあったとされる。

   ベース車両の仕様変更でひと悶着あったことで、契約解除につながったようだ。

ナノオプトニクス・エナジーがスポンサー企業に名乗り

   こうした事態はEVベンチャーに、悪影響はないのか――。EVカーの開発について詳しい関係者は、「ゼロスポーツは稀有なケース。これで電気自動車の研究や開発がストップしたり、まして後退することはないでしょう」という。

   2010年3月にEVカー事業への進出を表明した、鳥取県米子市に工場を構えるナノオプトニクス・エナジーは、破たんしたゼロスポーツのスポンサー企業として名乗りをあげた。従業員も一部を受け入れる。

   同社のEVカー事業は11年春の操業。15年度には約1000億円の売上げをめざしている。「いま、改造EVカーの分野は一番盛り上り機運がある。大手メーカーを除くと、経営は厳しい状況にあるが、これをもっと盛り上げていく必要がある」と力を込める。

   一方、ゼロスポーツと取引のある金融機関の関係者は「技術力や将来性に問題があったわけではない」と明かす。

   別の取引銀行の関係者は、「EVカーの将来性が見込めないわけではない。(ゼロスポーツの件は)契約解除のはっきりした理由はわからないが、日本郵便にもしがらみがあるのでしょう。ただ、企業が成長するためには技術力だけではないということが浮き彫りになった」と話している。

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