2024年 5月 1日 (水)

築地市場の競りで買い手つかず 放射性物質検出で茨城の漁業打撃

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   茨城県北茨城市の漁港に水揚げされたコウナゴから、高濃度の放射性物質が検出された問題は、同県の漁業関係者に大きな打撃を与えた。コウナゴは当面出荷停止、他の魚介類も市場で買い手がつかないなど影響が出ている。

   震災以降、消費者の外食自粛などで魚の消費が落ちていたところに今回の問題が追い打ちをかけ、魚介類のさらなる買い控えや値崩れが懸念される。

スーパー鮮魚売り場には、関東以西の産地の魚介類

魚介類にも風評被害の懸念が(写真はイメージ)
魚介類にも風評被害の懸念が(写真はイメージ)

   東日本大震災の影響で出漁を控えていた茨城県の漁業関係者。漁が再開して間もない2011年4月4日、北茨城市の平潟漁協が検査用に採取したコウナゴから、1キログラムあたり4080ベクレルと高濃度の放射性ヨウ素が検出された。翌5日には同市内の大津漁港で、食品衛生法上の暫定規制値を上回る同526ベクレルの放射性セシウムを含むコウナゴが見つかる。魚については放射性ヨウ素の基準がなかったため、厚生労働省は4月5日、魚介類の暫定規制値を野菜と同じ2000ベクレルに設定した。

   茨城県魚政課に聞くと、県内11の漁協でコウナゴの当面の出荷自粛を決定。それ以外の魚についても、4月6日はほとんどの漁協で出漁を見合わせたという。コウナゴ以外の魚からは、規制値を超える放射性物質は検出されなかったが、5日の水揚げ分の魚価は低調で、地元の市場でも半額以下、6日朝の築地市場の競りでは買い手がつかなかったという。

   宮崎産カツオ、愛知産アサリ、鹿児島産サバ――。2011年4月6日、都内スーパーの鮮魚売り場には、関東以西の産地の魚介類が目立つ。関東近海産を探すと、千葉産のホウボウがかろうじて見つかった程度だ。地元茨城ではどうか。利根川の河口に近い同県神栖市に住む主婦に聞いたところ、スーパーには「銚子産」とラベルのついたイワシやヤリイカ、キンメダイがパック入りで販売されていると話す。ただし「鮮魚コーナーは以前より縮小していました」。以前は見かけない大分産や静岡産のシラスも並んでいたそうだ。

   神栖市から、利根川を挟んだ反対側には千葉県銚子市がある。神栖市の「はさき漁業協同組合」に所属する漁船が4月5日、ボタンエビやキンキなどを銚子漁港に水揚げしようとしたところ、漁港側から拒否された。神栖市沖でとれた魚も、しばしば銚子に水揚げされていたようだが、同じ茨城県沖でとれたコウナゴから放射性物質が検出されたことを受け、「茨城産」の魚が持ち込まれるのを避けたかったのだろうか。

「銚子産」でもどこの沖でとれたか分からない

   千葉県水産課によると、今回の「水揚げ拒否騒動」は、銚子市漁業協同組合が他県でとれた魚の取り扱いについて協議中だった際に起きたという。震災と津波で東北の太平洋沿岸の漁港が壊滅的な損害を受け、「日本でもトップクラスの水揚げ量を誇る銚子漁港に、東北各地からも水揚げ受け入れの依頼が来た」(千葉県水産課)。一方で銚子市漁協にとっては、どこの沖でとれたか分からないまますべて「銚子産」として消費者向けに出荷されることを懸念。福島第1原子力発電所の事故で、海水に放射性物質を含む汚染水が流れ出ていることも影響し、漁協関係者が「実際に漁が行われた場所を明記するなど、慎重な対応」を検討していた。

   ところが対応方法が決まらないうちに、はさき漁協所属の漁船が銚子港での水揚げを求めてきたため、断らざるを得なかったと千葉県水産課では説明する。

   農林水産省は6日、今回の水揚げ拒否は卸売市場法で禁じる「不当な差別的扱い」に当たるとして、市場を管轄する千葉県に対して、銚子市漁協を指導するよう要請した。

   水産庁は、都道府県が実施した魚介類の放射性物質検査の結果をウェブサイトで公表している。それによると、茨城の漁港で水揚げされたもののうちコウナゴ以外は、すべて暫定規制値を下回っている。同様に銚子漁港のものも一切問題ない。とはいえ消費者の不安は消えない。前出の神栖市の主婦も、「幼い子どもがいるので、今は地元の魚を食べさせるのは正直心配です」と打ち明ける。

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