2024年 5月 3日 (金)

NHKの番組ネット配信に反対  民放連主張の根拠「意味不明」

   NHKがインターネットで番組を同時配信する構想を打ち出したことに、日本民間放送連盟(民放連)が「経費に受信料を使うのは反対」と異を唱えた。

   これまでも、ネット配信については積極姿勢のNHKに対して、民放連は費用面や権利処理の観点から実現に難色を示し、意見が分かれていた。専門家からは「民放は利用者目線が欠如している」との指摘もある。

NHKの主張を「独りよがり」と批判

「ネット配信は受信料」は批判覚悟での一案か
「ネット配信は受信料」は批判覚悟での一案か

   外部有識者による「NHK受信料制度等専門調査会」は2011年7月12日、報告書をNHK側に提出した。この調査会は、「フルデジタル時代」における受信料制度とその運用を検討してきたが、報告書にはネットによる同時配信に関する方向性を明らかにしている。

   そこでは、NHKが公共放送としての役割を新たな時代で果たすうえで、ネットのような「伝統的な放送外の伝送路」の利用が不可欠とした。具体的な実現には、現行法の改正が必要との前提に立つものの、ネット同時配信が、パソコンや携帯端末といった「通信系端末」のみを利用する人にも社会参加を促し、「あまねく」情報を伝達する役割を一段進んだものにできる、という。

   ネット同時配信を実現するための財源は、ひとつの考え方として受信料を挙げている。具体的には、既にテレビ受信機の設置に応じて受信料を支払っている視聴者とは別に、パソコンなどの通信端末でNHKを視聴する人を対象に加えるというものだ。

   この報告書に対して民放連は9月15日、「見解」を発表した。NHKのネット同時配信の経費に「受信料収入を充てることには反対である」と意思表示したのだ。さらに、主にネット経由で情報を入手する若者層にもNHKの情報を届けなければ、NHKの役割を果たせないという主張は「独りよがり」の懸念があると指摘した。

   受信料負担については、同時配信が実現した際に生じる恐れのある「相当なコスト負担」まで受信料全体で賄うのは「受益と負担の観点から、著しく適切さを欠くのではないか」と断じた。

「自らの利益を守ろうとする要素強く利用者の目線が欠如」

   ネット上の利用者の意見を見ると、民放連の反対意見に支持が広がっているわけではなさそうだ。今回の「見解」の指摘内容が「何を言いたいのか分かりにくい」との批判があるうえ、ネット配信自体に消極的な姿勢を見せる民放連に、「既に時代遅れなのに、ますます取り残されますね」「民放で『見たいな!』と思わせるオンデマンドサービスが無いくせに」と厳しい声も出た。

   上智大学文学部新聞学科(メディア論)の碓井広義教授は、NHKがネット同時配信を実現しようとする姿勢に一定の評価をする一方、民放連の「見解」には「自らの利益を守ろうとする要素が強く、利用者の目線が欠如している」と話す。テレビ以外にも番組を受信できる「経路」が増えれば当然、視聴者にとって利便性が高まる。その視点が民放連にはないというのだ。

   碓井教授は、景気の低迷による広告収入の減少、それによる番組の質の低下で民放から視聴者離れが起きている現状を指摘。一方で若者の間では、「テレビいらない、ネットで動画サイト見ればいい」という学生も多く、メディアの利用に変化が起きている。その状況で今度は、NHKがネット同時配信を進め始め、民放の危機感はこの上ないというのだ。

   「ネット配信は著作権などをクリアするのが難しい、というのは、実は十数年前から民放が主張していました。これまでにも、その気になれば出演者との契約にネット配信の条項を盛り込むこともできたはず。今も同じ主張を繰り返しているのは、ネットへの対応の遅れを反省していないのでしょう」

   NHKが、ネット配信に伴う「受信料負担」を持ちだしたのは、議論を進めるうえで、批判覚悟での行動ではないかと碓井教授は考える。実際の料金体系はまだ何も決まっていないからだ。碓井教授は「パソコンを持っているから(自動的に)受信料を払う、ということではなく、将来は地上波、衛星放送、ネット配信のセットでの受信料になるのではないでしょうか。そこには、過去の番組を見られるサービスも含まれるでしょう」と推測する。一方民放は、広告収入が厳しくなっている今こそ、ネット配信のモデルを真剣に考えるべきではないかと提言する。

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