「いじめをしない、させない、見逃さない、許さない学校」 いじめ自殺の中学校は「道徳教育先進校」だった

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   滋賀県大津市内の中学生に通って2年生の男子生徒=当時13=が2011年10月に自宅マンションから飛び降りて自殺した問題で、滋賀県警が12年7月12日、学校と市教委を家宅捜索する事態にまで発展した。この日行われた保護者向け説明会でも、保護者からは「誠意が伝わらない」などと不満の声が続出。中学校への信頼は地に落ちた形だ。

   実はこの学校は、つい数年前までは、道徳教育の研究事業の「推進校」に指定されていた。現在でも、ウェブサイトには、いじめ防止に関するスローガンが掲げられているが、今回のような事態が起きた以上、「実践は、一体何だったのか」ということにもなりかねない事態だ。

09年から10年にかけて道徳教育実践研究事業」推進校に指定

   新学習指導要領の12年度からの完全実施を前に、この学校では、道徳教育については09年度から新カリキュラムを先行実施している。さらに、09年から10年にかけて文部科学省から「道徳教育実践研究事業」推進校に指定され、道徳教育については先進的な取り組みをしていたはずだった。

   学校のウェブサイトに掲載されている180ページに及ぶ報告書によると、09年度は道徳教育についての知見がある外部講師を呼んで授業研究を行い、10年度はロールプレーやグループ活動を通じて、実際の授業力向上に取り組んだという。

   「いじめ」という言葉が報告書に登場する回数は多くないが、指導計画の中には、授業のねらいとして

「見て見ぬふりをする消極的姿勢を憎み、いじめや不正を断固として許さぬ心を行動で表す実践意欲を培う」(1年生)
「いじめの愚かさ知り、差別、偏見を憎み、不正な言動を断固として許さない態度を育成する」(3年生)

といった文言が確認できる。

   報告書では、2年間の成果を

   「少しずつではありますが、子どもたちの心に響く道徳の時間になり、一人一人が自己を見つめ、自己肯定感、自尊感情を高め、『よりよく生きようとする心』、『共に生きようとする心』の和が広がってきたのではないかと思います」

などと振り返っている。

「推進校」指定終わっても「ストップいじめアクションプラン」掲げる

   「推進校」の指定が終わった12年度もウェブサイトに

「ストップいじめアクションプラン」

と題した文書を掲載。

「いじめをしない、させない、見逃さない、許さない学校」

とのスローガンを掲げている。その中で、教職員のアクションとして

「いじめ等の問題行動の早期発見早期対応(月一回のアンケート調査の実施)」
「機会をとらえた適切な指導」

といった事柄が羅列されているが、自殺者が出てしまった以上、これらが適切に行われたとは考えにくい。

   なお、「推進校」に指定されていた09年から10年に文部科学大臣を務めていたのは、滋賀1区選出の川端達夫衆院議員(現総務相)。滋賀1区は、問題の中学がある大津市を中心とする選挙区だ。このことから、中学校への対応が後手に回っている背景について

「その(推進校指定の)成果が上がったとしたもんだから、そういう学校からは死んでもイジメが出たりしてはいけなかったというわけか」(自民党・義家弘介参院議員)

といった見方も出ている。

   また、自殺といじめの関連を否定し続けていた沢村憲次教育長は、この中学校の校長を務めたことがある。このことも、問題解決を遅らせる一因になっているとの指摘がある。

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