2024年 4月 26日 (金)

「12月21日人類滅亡」はデタラメ 米政府が公式サイトで否定

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   かつて中米メキシコやグアテマラ一帯に栄えたマヤ文明の暦を巡って、12月21日に世界が滅亡するとのうわさが今も絶えない。

   専門家は「マヤ暦が世界の終末を示した証拠はない」と指摘する。それでも恐れる人がいるためか、とうとう米政府が公式サイトでうわさを完全否定する事態となった。

マヤ碑文に予言的な内容を刻んだ例は一切ない

   「2012年12月21日、世界は終りの日を迎える」。人騒がせなうわさのもととなったのが、マヤの暦のひとつ「長期暦」だ。これは紀元前3114年に初年の基準の日が設定され、以後5125年を1サイクルと数える。今年の12月21日がちょうどサイクルが完結する日に当たる。2009年に公開された米ハリウッド映画「2012」では、これが地球滅亡の日とするシナリオで大ヒットした。

   だが専門家は、根拠のない「世界終末説」を一蹴する。マヤ文明の研究者で現在、中米に滞在中の金沢大学人間社会研究域国際文化資源学研究センターの中村誠一教授はJ-CASTニュースの取材に、「長期暦は3世紀終わりから10世紀初めまで使われていた暦です。当時のマヤ文明の遺跡には、長期暦と一緒にマヤ碑文が刻まれていますが、そこに予言的な内容を刻んだ事例は一切ありません」と説明する。

   マヤ暦の12月21日の意味は、「我々のカレンダーが12月31日で終わっているのと同じで、カレンダーが変わって新たな時代に入るということに過ぎません」。

   それでも海外では、冗談ではすまないほどの騒動になっている場所がある。英テレグラフ紙電子版は12月7日、ロシアの一部地域で食料品やマッチなどの買い占めが起きていると報じた。中には「地球最後の日グッズ」としてウオツカや石けん、ロープをひとまとめにして売り出している店まであるという。パニックに陥った住民が懐中電灯や灯油をありったけ買い込んだという話も出ているようだ。

   中国共産党の機関紙「人民日報」の日本語電子版も12月7日、南京の女性が世界の終末を信じて自宅を売却した、四川省でろうそくを買いだめする人が続出した、といった話題を報じている。

   米国では政府が腰をあげた。公式サイト「USA.gov」で12月3日、「2012年に世界が滅亡するという恐ろしいうわさは、ただのうわさ」として否定した。ここでは「マヤ暦が2012年で終わりを迎える」「いん石により甚大な被害が生じる」「未知の惑星が地球に衝突する」といった話を全面的に否定。「2012年12月21日は世界の終末の日とはならない」と火消しに躍起だ。

歴史的な日が「大衆メディア文化でめちゃくちゃに」

   米航空宇宙局(NASA)には数千件の問い合わせが寄せられているという。NASAの担当者は「11歳の子どもからも質問が送られてくる。世界が滅ぶのならいっそ死んでしまいたい、との声すらある」と話しているという。さらに公式サイトで、惑星衝突による地球滅亡説を打ち消した。

   この説が初めて登場したのは1995年で、ある女性が「お告げを受けた」として自身のサイトで紹介したのだという。その後、この女性の説を支持する人たちが、「ニビル」と名付けられた未確認惑星の地球衝突を、マヤの長期暦が一巡する2012年12月21日に起こるとの持論を唱えたとしている。

   それにしてもなぜ、マヤ暦と世界の滅亡が結びつけられたのか。前出の中村教授は、ふたつの説を挙げた。ひとつは、マヤの遺跡に刻まれた碑文を何らかの予言だと勘違いしたというもの。もうひとつは、スペイン人がマヤ文明を滅ぼした16世紀以降、それまでユカタン半島北部の村々に伝承されていた「チラムバラムの書」に「2012年の予言」が書かれていると、これまた勘違いされ、伝えられたとの説だ。

   16世紀には既に長期暦は使われておらず、約256年で1サイクルとなる「短期暦」に代わっていた。「チラムバラムの書」には、短期暦のある特定の周期に有力な都市が滅ぶなどの言い伝えが書かれているのだが、これを長期暦が完了する12月21日と強引に結び付けて誤った解釈をしているのだという。

   マヤの研究者からは、「5000年に1度」という歴史的な日が「根拠の薄い人類滅亡説」に結び付けられたと嘆く声も上がっている。米国立アメリカ・インディアン博物館で副館長を務めるホセ・バレイロ氏は米ブログメディア「ハフィントンポスト」に11月28日、「世界は終わりを迎えない」との題名で寄稿。マヤの記念すべき日が、映画「2012」のような「大衆メディア文化によってめちゃくちゃにされつつある」と批判した。

   映画では、津波がニューヨークなどを飲み込むような災厄が起こる日として描かれていると指摘し、ある企業は「マヤ暦は世界の終わりを予言している」という「ウソの広告」を流したとする。続けてバレイロ氏は、「現地に住む600万人の『マヤ人』のことを考えると、あまりにもひどい」としている。

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