2024年 4月 29日 (月)

「原発回帰」安倍政権 再稼働の行方(4)
10~20年で考えると原発に経済合理性ない
システム技術研究所・槌屋治紀所長にエネルギーの未来を聞く

太陽光と風力をうまく組み合わせ変動に対応

―― 太陽光や風力は、天候に左右され、安定供給に疑問もあります。

槌屋 スマートグリッドのように需要をコントロールする方法が開発されていますし、供給の側も調整可能です。例えば太陽光は昼間に発電する一方、風力はどの時間もおなじくらい吹いている。年ベースで見ると、太陽光は4~10月に多く発電するが、風力は、冬は多く夏は少ない。太陽と風力をうまく組み合わせた上で、揚水発電やバッテリーで調整すれば、うまく変動に対応することが可能なことがシミュレーションをするとわかります。再生可能エネルギーの割合が低い2020~30年代までは、揚水発電だけで対応可能だと思います。高性能なバッテリーはそれまでに開発できれば良いと考えています。

―― 安価なシェールガスが「エネルギー革命」だとして注目を浴びています。再生可能エネルギーの普及にブレーキをかけるのではないですか。

槌屋 「シェールガスは安い」と言いますが、過剰宣伝が行われている可能性もあります。90年代の英国・北海油田で似たことが起きています。当時は「これで英国も石油輸出国になる」と言われたものですが、それから15~20年が経って、もう枯渇してきている。今となっては、北海では風力と波力のプロジェクトが大々的に展開されています。米国でも、この状況が何年続くか疑問です。石油やガス田の「残りかす」を弁当箱の隅をつつくようにして取り出す、最後の悪あがきのようなものですね。採掘の際は、地下2000~3000メートルに、摩擦を減らすための化学物質を含んだ水を注入します。地下水にどういう影響があるか心配です。地震を誘発すると懸念する専門家もいます。サステナブル社会への移行は、化石燃料への依存を減らしてゆくことですから、寄り道になり歓迎しませんね。

槌屋治紀さん プロフィール

つちや・はるき 1943年千葉県生まれ。東京大学工学部機械工学科卒業、同大学院博士課程修了。工学博士。79年システム技術研究所を設立。エネルギー・資源分析、情報科学の手法を使って持続可能な社会への道筋を提案。政府のエネルギー政策、地球温暖化に関する各種委員会の委員を務める。

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