東大地震研「完全に催眠術にかかっていた」 活断層誤認にこの言い訳はないだろう

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   東大地震研究所が「新たな活断層を確認した」と発表していた根拠だったはずの石が、じつはコンクリートの塊だということが分かり、発表内容の一部撤回に追い込まれた。調査対象の立川断層帯は地震が起きた際は大きな被害が予測されているだけに、地域住民からは困惑の声も上がっている。

   東大地震研の佐藤比呂志教授は、「完全に催眠術にかかっていた」と予断を持った判断が誤りにつながったことを悔いており、結果の公表を急いだことが影響したことも明かした。科学の世界でも、実はヒューマンエラーで大きな影響が出ることが改めて浮き彫りになった。

立川断層帯は首都圏に震度7もたらす可能性

   調査の対象となっている「立川断層帯」は、「名栗断層」と「立川断層」から構成されており、埼玉県飯能市、東京都青梅市、立川市、府中市を北西方向に約33キロにわたって走っている。そのうち「立川断層」の長さは約20キロで、近い将来に活動する恐れがある活断層として注目されているが、まだ分かっていないことも多い。

   立川断層帯は「首都直下地震」の震源のひとつとされ、首都圏に震度7の揺れをもたらす可能性も指摘されている。東京都の想定では、地震が起こった場合、規模はマグニチュード7.4に及び、死者約2600人、負傷者約3万1700人、ピーク時の避難者約101万人を見込んでいる。断層のメカニズムの解明は、被害想定にも影響してくる。

   東大の地震研究所などでつくるチームは、長さ250メートル、幅30メートル、深さ10メートルにわたる「トレンチ」と呼ばれる巨大な溝を武蔵村山市の日産自動車村山工場跡地(現・真如苑プロジェクト用地)に2000万円以上かけて掘り、調査を進めていた。

   これまで立川断層は、地盤が上下に動く「逆断層」だとされてきたが、調査チームでは、水平方向に動く「横ずれ断層」の可能性もあるとみていた。横ずれ断層の方が揺れが大きくなり、被害が拡大する可能性もある。

一般見学に来た土木関係者の指摘で発覚

   調査でも、横ずれ断層で動いたとみられる石のようなものが見つかり、2013年2月6日にトレンチが報道陣に向けて公開された際に、佐藤教授は

「活断層による地層のずれが新たに見つかった」

と、成果を強調していた。ところが、その数日後に行われた一般公開で、土木関係の見学者から「人工物に見える」との指摘があり、さらに2~3メートル掘り下げて調査したところ、地層のずれや動きなど、断層と判断していた根拠を確認できなくなってしまった。

   「断層活動で動いた石」だったとされていたものは、コンクリート製の「くい」だった可能性がある。佐藤教授は3月28日に開いた会見で、

「土木工事の経験がなく、上から挿入した可能性は考えなかった」

と釈明。

「住民の皆様をはじめ、社会的にも情報に関して混乱を与えてしまったことをお詫びする」
「見たいものが見えてしまった」
「完全に催眠術にかかっていたので、分からなかった」

と、予断を持った判断を陳謝した。

   実は、調査の結果が出ない状態で一般公開が行われることは異例だが、住民の防災意識を高めることを目的に行政側が公開を急いだとされる。このことも、「公開までに一定の見解を出さなければ」(佐藤教授)と、判断を誤らせた一因になっているようだ。

   なお、立川断層が活断層だという判断自体は変わらず、引き続き警戒が求められる。

ネット上では「ずさん」と「間違い認めるのに好感」に二分

   今回の訂正発表をめぐっては、ニュースを報じる記事についたコメント欄の声を見る限りでは、

「断層専門の教授と称して調査をしているが本当に専門の教授なのか」
「コンクリ塊と岩石の違いが分からない人が東大地震研の教授をしているということには驚いた」

と調査のずさんさを非難する声と、

「どんまいって感じだけどちゃんと指摘をうけて再調査を行い、間違いを認めてるのでなんか好感を持った」
「確かにミスだが、あんまり叩くのも良くない、研究者が失敗を恐れて隠してしまったら余計困る」

と「過ちては即ち改むるに憚ることなかれ」とはかりに、むしろ評価する声に二分されている。

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