2024年 4月 28日 (日)

高橋洋一の自民党ウォッチ
川口氏解任にみる国会の「時代錯誤」  海外渡航ルール、もっと柔軟に見直しを

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   自民党の川口順子参院環境委員長が解任された。国会の了承を得ないまま中国訪問の滞在期間を延長し、参院環境委員会が中止になったことを受けて、民主党など野党が「委員長の職責をみずから放棄した」ということで解任決議案を提出し、5月9日(2013年)の参院本会議で可決された。

   野党は川口氏が渡航許可のルールを無視したことを主張し、自民党は、滞在の延長は中国政府の要人と会談するためで国益にかなっており野党が延長を認めなかったことが問題としている。

国会議員に「居眠り」が連発する理由

   それぞれが渡航ルールを前提としており、その運用について見解の差がある。さらに、その見解の差の背景には、国益の認識の違いがある。

   まず、渡航ルールは「国会開会中における常任委員長及び特別委員長の海外渡航に関する申し合わせ」といい、参議院において委員長は原則として(国際会議出席を除き)国会会期中の外遊を許されていないが、議院運営委員会理事会の決定によって例外的に認められている。今回は、その例外措置との位置づけだ。

   そもそも、この渡航ルールが世界標準ではない。日本の国会運営は、欧米諸国と異なり、首相や閣僚のみならず、国会議員も国会に拘束しすぎる。このため、答弁の必要のない閣僚や、質問をする機会のない国会議員は、質疑中居眠りの連発だ。誰でも関心のない話を聞いているのは苦痛でしかないので、居眠りをこらえるためか、質問しない国会議員はヤジに徹底する。適度なヤジは議論を活発化させる「議場の花」であるが、質疑の妨害になるものも最近は目立っている。こうした光景はとても子供に見せられたものでない。

   欧米の国会では、質問する国会議員と答弁する閣僚、官僚の間で議論しており、無関心な関係者はいない。会議の様子を知りたければ、議事録やインターネット中継を見ていれば十分である。

川口氏の渡航と国益の有無

   こうした時代錯誤のルールをもとに、与野党がお互いの主張を言い合っているのは滑稽でしかない。それでも、その背後にある国益について、議論が深められたのであれば少しの救いもあるが、国益についての議論は不十分だ。

   野党は、渡航ルール違反を言うので、川口氏の滞在延長による国益はないという主張になる。一方、自民党は形式的な渡航ルール違反は認めるものの、それを上回る国益があったという。

   野党の主張は、川口氏の外相時代におけるパフォーマンスの悪さを問題にし、さらに、そもそも外交は政府が行うもので議員はすべきでないということから、国益はないと判断している。一方、自民党は、アジア各国の外相経験者で構成される国際的なシンポジウムに出席し、日中関係が主な議題だったので、川口委員長の滞在期間延長は国益があったという。今回の国益については、国会議員は外交に口出すなというのは極論としても、どちらの言い分にも一定の理があり、判断が付きにくいところだ。

   国益論はともかくとして、今回は結局、国際常識から逸脱した渡航ルールにより、川口氏は委員長を解任された。これを今さらとやかくいっても仕方がないが、これを契機として、渡航ルールなど国会運営をもう少し合理的に見直したらどうだろうか。国会審議は意外とまばらで集中的でない。定足数要員として質問もできずに国会に縛られるだけでは、国会議員の能力も活用できないので、もっと選択と集中を行うべきだ。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2005年から総務大臣補佐官、06年からは内閣参事官(総理補佐官補)も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「財投改革の経済学」(東洋経済新報社)、「さらば財務省!」(講談社)など。


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