2024年 5月 4日 (土)

エネルギー基本計画案、玉虫色の決着に 自民党政権が「脱原発」にも一定の配慮

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   自民党政権のエネルギー政策の指針となる「エネルギー基本計画」の改正案が2013年12月13日まとまったが、微妙な表現もみられ、波紋を広げている。原発推進を大前提にしているのはもちろんだが、慎重論を一部併記しているのだ。

   これは自民党政権といえども、脱原発を求める世論には逆らえず、「土壇場で最大限の妥協を図った」(政府関係者)ことを物語っている。

安倍首相「ゼロベースで見直す」と明言

   エネルギー基本計画は、2002年に成立した「エネルギー政策基本法」に基づき、3年に一度見直すことになっている。民主党政権は「2030年代に原発稼動ゼロ」(革新的エネルギー・環境戦略)を目指した。これに対し、安倍晋三首相は2012年末の政権獲得後、民主党政権時代の脱原発のエネルギー政策を「ゼロベースで見直す」と明言し、総合資源エネルギー調査会(経済産業相の諮問機関)の基本政策分科会で議論を進めていた。

   分科会は新日鉄住金相談役名誉会長の三村明夫氏(日本商工会議所会頭)が会長を務め、委員15人のうち、明確に脱原発を主張したのは植田和弘京大大学院教授と辰巳菊子日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会常任顧問の二人だけ。民主党政権では脱原発派の委員が3分の1を占めたのとは様変わりし、原発推進の議論が進むのは目に見えていた。

   案の定、今回の計画案は「安全性の確保を大前提に、基盤となる重要なベース電源として原子力を引き続き活用していく」と、原発推進を明確にした。ただ、「原発依存度については可能な限り低減させる」と、脱原発に理解を示す一方、「必要とされる規模を十分に見極めて、その規模を確保する」と、原発の新設・増設に含みを持たせる玉虫色の内容となった。

   基本計画案は当初、運転開始から40年を超えた原発を廃炉にする代わりに後継機を建設(リプレース)するなど、原発の新設・増設を盛り込むと見られていた。電力会社で組織する電気事業連合会が40年超の原発の運転延長や新増設・リプレースを強く求めたからだ。だが、将来的な原発の発電比率とともに、委員の間から「現時点では記載するための材料がない。現状から考えると、やむを得ない」などの意見が出たため、盛り込まれなかった。新増設の明記は脱原発を求める国民世論の理解を得られず、政府や電力会社が目指す原発再稼動にも影響すると判断したようだ。

様々な議論を正面から真摯に受け止めなければならない

   もちろん、計画案は「核燃料サイクルを引き続き着実に推進する」とも明記。小泉純一郎元首相の脱原発発言で国民の関心が高まっている高レベル放射性廃棄物の最終処分については「国が前面に立って取り組みを推進する」など、政府の積極的な関与を明確にした。

   同時に、使用済み核燃料を再処理しない「直接処分」について、「直接処分など代替処分オプションに関する調査・研究を推進する」とも言及。これは核燃料サイクルが計画通り進まなかった場合の逃げ道になるもので、民主党政権の政策を自民党政権も踏襲する形となった。

   このほか、マスコミは大きく取り上げていないが、計画案は「原発事故前に比べ、我が国のエネルギー問題への関心は極めて高くなっている」として、「原子力の利用は即刻やめるべき、できれば原発を全廃したい、我が国に原子力等の大規模集中電源は不要であるなど、様々な立場から意見が表明されている。政府はこうした様々な議論を正面から真摯に受け止めなければならない」という文言が盛り込まれた。

   原発事故前の自民党政権では考えられない文言で、電力業界はじめ経済界の意向を受けて原発を推進したくとも、脱原発の世論にも配慮せざるをえない政府の苦悩が滲んでいる。

   計画案は一般の意見公募を経て2014年1月にも閣議決定される見通しだが、NPO法人「環境エネルギー政策研究所」や公益財団法人「自然エネルギー財団」など原発を基幹電源とすることへの反論も根強く、今後の世論の動向が注目される。

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