2024年 5月 5日 (日)

検証アベノミクス インタビュー(2)
アベノミクス、「いま8合目」 国民一人ひとりの生産性向上でインフレ目標達成へ
第一生命経済研究所首席エコノミスト・嶌峰義清氏に聞く

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「持続的なインフレ」を実現すれば、財政破たんのリスクは遠のく

―― アベノミクスはいま、何合目に達しているのでしょう。

嶌峰 「2年で2%」の物価目標は実現可能です。ベースアップが条件ですが、目標達成の8合目まできていると思います。

   そもそも、アベノミクスの基本的な考え方は、「インフレーションを起こす」こと。モノの値段を継続的に上げていこうというものです。日銀が掲げる2%の物価目標は一時的な2%到達ではなく、中長期的なインフレ期待を2%程度で安定させることが本来の狙いです。政府の成長戦略が軌道に乗れば、こうした日銀の政策目標は達成できます。

   加えて、アベノミクスには隠れた4本目の矢、「財政再建」という狙いもあります。日本国債の残高は2013年6月末時点で1008兆6281億円。国民一人あたり792万円で、国債を含む債務残高が国民総生産(GDP)に占める割合はじつに224.3%にのぼります。米国の113.0%、財政危機が懸念されるイタリアの129.6%をはるかに上回る世界一の借金大国なのです。アベノミクスは、そんな借金漬けの状態からの脱出をも目論んでいるわけです。

   東日本大震災からの復興を含め、景気回復のために国債を刷り続ける一方で借金を減らす、そんな相反する目的を解決しようというのがアベノミクスでもあるのですが、財政再建を考えると、まだ5合目といったところでしょう。

―― さすがに2%のインフレで財政再建は厳しいのではないですか。

嶌峰 インフレにするためには、国民一人ひとりの賃金を上げ、スキルをアップすればよいことは理解していただけたと思います。国民一人あたりの生産性を向上することによって持続的な経済成長が実現できれば、つまりGDP(国民総生産)を増やしてインフレにできれば、国債を含む国の借金のGDPに占める割合を200%切る水準に抑えることが可能になりますから、財政破たんのリスクは遠のきます。

   もちろん、それだけではダメで、財政再建については少子高齢化によるデフレ圧力がかかり続ける、これには社会保障費や医療費の増加もありますから、今後10年間に最低15~20%に消費税率を引き上げなければならないでしょうし、歳出を圧縮する努力も必要です。


嶌峰 義清氏プロフィール

しまみね・よしきよ 第一生命経済研究所首席エコノミスト。青山学院大学経済学部卒、1990年岡三証券入社。岡三経済研究所を経て、92年日本総合研究所入社。この間、エコノミストとして各国経済を担当。93年日本経済研究センターへ1年間出向。94年以降、日本総合研究所へ戻った後は、米国経済・金融市場動向を担当。98年5月、第一生命経済研究所入社。日本経済担当、米国経済担当を経て、現在は金融市場全般を担当。2011年4月より現職。

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