2024年 4月 27日 (土)

中国が南シナ海で実効支配強めるのはなぜか? 各国反発、孤立しても強硬姿勢崩さず

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   中国がベトナムやフィリピンと領有権争いを展開する南シナ海での動きを加速させており、一触即発の状態だ。ベトナムやフィリピンが主張する排他的経済水域(EEZ)内で、突然石油の掘削や暗礁の埋め立てを始めたからだ。国際的には孤立状態だが、中国側には一歩も引く気配は見えない。

   ベトナムでは対中感情が悪化しており、デモで死者が出る事態に発展している。

「九段線」の内側に管轄権が及ぶと主張

フィリピン外務省が発表したジョンソン南礁の写真。左上が2012年3月、右上が13年2月、左下が14年2月、右下が14年3月。埋め立てが進んでいることがわかる
フィリピン外務省が発表したジョンソン南礁の写真。左上が2012年3月、右上が13年2月、左下が14年2月、右下が14年3月。埋め立てが進んでいることがわかる

   中国は1950年代から南シナ海に「九段線(きゅうだんせん)」と呼ばれる9本の境界線をU字型に引き、その線の内側に自らの管轄権が及ぶと主張している。南シナ海のほぼ全域に主権が及ぶと主張しているに近いが、国際法上の根拠はない。2012年5月に発行が始まった中国のICパスポートの地図でも、南シナ海の島々がすべて中国のものであるかのように描かれており、ベトナムやフィリピンが猛反発したという経緯がある。

   この段階では中国の具体的な行動は確認されなかったが、ここ1か月ほどで急に情勢が緊迫化している。パラセル(西沙)諸島近海では中国が石油の掘削を開始し、中国船がベトナムの巡視船などに衝突や放水砲で攻撃を繰り返した。ベトナム政府が5月7日にこの事実を会見で発表。ベトナム政府は徹底抗戦の構えで、洋上では両国の船による放水の応酬が続いている。

   ベトナムでの対中感情も急激に悪化している。反中デモの参加者の一部が暴徒化して中国企業に対する破壊活動に及んだほか、ロイター通信によると、ベトナム中部ハティン省で5月14日に起きたデモでは21人が死亡した。そのうち16人が中国人だとみられている。

埋め立てて滑走路ができると空軍基地になるおそれ

   フィリピンに対しても強硬姿勢を強めている。2014年5月14日と15日のフィリピン外務省の発表によると、スプラトリー(南沙)諸島のジョンソン南礁(中国名・赤瓜礁、フィリピン名・マビニ礁)に中国が土砂や資材を搬入し、埋め立てを始めている。ジョンソン南礁はフィリピンが主張する排他的経済水域(EEZ)内にあり、フィリピンは中国側に抗議している。

   特に問題視されているが、滑走路のようなものの建設が進んでいることだ。仮に滑走路が空軍基地として運用されれば中国が制空権を拡大するのは確実で、地域が不安定化するリスクが高まることになる。

中国外相「自らの正当な権益を守るという立場は強固で明確で不変」

   この問題をめぐっては、中国は完全に孤立状態だ。東南アジア諸国連合(ASEAN)は5月10日にミャンマーで開いた会議で、「事態の悪化に深刻な懸念を表明」する緊急声明を発表し、菅義偉官房長官も、5月15日の記者会見で

「力による一方的な現状の変更は慎むべき。お互いに話し合いで解決すべき」

と中国側に自制を求めている。米ホワイトハウスのカーニー報道官は5月14日の会見で、脅しではなく平和的な対話を通じて問題を解決する重要性を強調した。

   このように各国が足並みをそろえる中でも、中国は強硬姿勢を崩していない。中国外務省の華春瑩副報道局長が5月14日の会見で明らかにしたところによると、王毅外相はインドネシアのマルティ外相との電話会談の中で、

「中国企業は、中国の西沙諸島と関連する区域で通常通りの作業をしていた。これは10年前から始まったことだ」

と話し、緊張状態を作り出した原因はベトナム側にあると主張。

「中国が自らの正当な権益を守るという立場は強固で明確で不変だ」

と断言したという。ジョンソン南礁についても、華報道局長が「自らの主権の範囲内で建設することは正常なこと」だと述べた。

   この強硬姿勢の背景には諸説あるが、

「習(近平)政権は最高指導部が訪中した自民党幹部と相次いで会談するなど日本との関係改善を模索し始めた。それに伴い、対外強硬派の矛先を日本から南シナ海へと移す必要があった、と(編注:中国)共産党関係者は話す」(2014年5月15日、日本経済新聞)

といった見方も出ている。

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