2024年 5月 2日 (木)

朝日新聞「幹部級」も自社批判ツイート続々 池上コラム問題で「9月革命」が起きたのか

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   一度は朝日新聞に掲載を拒否された池上彰さんのコラムが一転、2014年9月4日朝刊紙面で掲載されたのは、社内外の激しい批判が一因だった。朝日新聞では記者によるツイッターの活用を進めており、ツイッターを通じて社内からの批判も可視化された。一連の自社批判には、末端の若手記者にとどまらず、編集委員などスター記者、さらには管理職など「幹部級」記者にも広がり、その数はあっという間に数十人に膨れ上がった。

   記者たちは、結果的にコラムが掲載されたことには安堵しながらも、コラムを実際に読んでみて「『この内容では掲載できません』の理由がますます分からない」などと当初の決定を改めて批判する声も多い。当初の掲載拒否の判断は木村伊量(ただかず)社長を頂点とする首脳陣が主導したとみられており、社内では「木村体制」への批判が高まっているともみられる。帝政ロシアが倒れた「10月革命」になぞらえて「9月革命」の可能性も指摘されはじめた。

社内の統制が取れていないので「情報が漏れ、現場が声を上げる」

池上コラム「一時不掲載」は木村伊量社長をはじめとする首脳陣が主導したとみられている
池上コラム「一時不掲載」は木村伊量社長をはじめとする首脳陣が主導したとみられている

   2014年9月3日夕方にコラム掲載が決まってからも、当初の決定を批判する声は朝日社内でやまなかった。尾形聡彦・国際報道部デスクは

「池上さんのコラムの掲載を見合わせていたことは、朝日新聞として間違った判断だったと思います。今日、社内で多くの議論があり、私を含め大勢の記者たちが『即日掲載すべきだ』と意見しました。そうした議論を踏まえ、掲載が決まりました。読者のみなさんや池上さんに本当に申し訳なく思います」

とツイート。社内の声が掲載を後押ししたことを明かした。北野隆一・編集委員は、一連の経緯を

「今回、結果的に社内の議論がオープンになったのは決して悪いことではなかった。でも、そもそも新聞は載せた記事の中身が話題になるべきで、新聞社の内幕が話題になるのはちょっと恥ずかしい」

と振り返った。複数いる朝刊編集長のひとり、沢村亙(わたる)氏は、社内の統制がとれない体質が、災い転じて福となしたとみているようだ。

「うちの会社も官僚的な体質があるが、主筆とか社長とかトップの鶴のひと声で軍隊のように一糸乱れずに動くこともできない。だからこそ情報が漏れ、現場が声を上げる。つくづく危機管理には向かない組織と思うが、これはこれでいい、と思う」

天声人語・前筆者「『この内容では掲載できません』の理由がますます分からない」

   9月4日朝になって紙面のコラムを読んだ記者からも、「不掲載」を支持する声は皆無だ。

   07年から13年まで天声人語の執筆を担当した冨永格(ただし)特別編集委員は、

「厳しいけれど、いつもの『池上節』の範囲内だと思います。こういうことを書いていただくのがこのコラムの狙い、かつ人気の理由でしょう。『この内容では掲載できません』の理由がますます分からない」

と、コラムの掲載は当然だとの見方を示した。石合力・国際報道部長も、

「見識ある批判に対して、謙虚に耳を傾けたいと思います」
とツイートした。

   今回の一連のツイートは、最初は末端記者クラスから始まったが、一気に中堅、幹部級まで広がったのが特徴だ。

「もし本当なら言論機関の自殺行為だ。朝日新聞社の対応に私は個人として賛同しない。少なからぬ同僚記者たちもそう思っている」(谷津憲郎・社会部遊軍長)
「北京出張で体調を壊し、帰宅すると冷蔵庫が『自然死』していて中は腐臭が漂い、池上彰さんのコラムの問題で会社の姿勢に腹が立って眠れず」(吉岡桂子・編集委員)
「掲載した上で、異論反論があるなら、紙面上で堂々と意見をぶつけ合えばいい。言葉には言葉で、それこそ読者は読みたいはず。いまからでも遅くない」(真鍋弘樹・ニューヨーク支局長)

「どの顔を思い浮かべても『こんな判断するわけない』という人物ばかり」

   中でも冨永氏は、

「ネット上の罵詈雑言や週刊誌広告の煽情とはワケが違います。『善意の批判』までを封じては言論空間が成り立ちません。度量の広さを示すチャンスをみすみす逃したばかりか、発信力のある書き手を『敵』に回してしまった。何重もの意味で『らしく』ない、もったいない対応でした」
「私の年齢になると編集幹部の多くと顔見知りですが、不思議でならないのは、どの顔を思い浮かべても『こんな判断するわけない』という人物ばかり。ここから何とかリセットできないものでしょうか」

と、今回の判断についての不可解さをにじませた。

   また、かなり早い段階から自社の対応を批判していた神田大介・テヘラン支局長は、

「別に記者アカウントの批判ツイートで決定がひっくり返ったってわけじゃないと思いますよ。もっと大きいうねりが社内であったようです」
「(まあ昔っから社内では、『朝日新聞のことを知りたければ文春・新潮を読め』ってよく言われたもんです。社員の知らない会社の話が満載)」

とツイート。社内で何らかの大きなうねりが起きており、それがまた週刊誌に報じられる可能性をほのめかした。

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