2024年 4月 26日 (金)

「私戦予備および陰謀」とはどんな罪なのか イスラム国に参加計画の大学生を事情聴取、法曹関係者も驚く

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   イスラム教の過激派組織「イスラム国(IS)」の活動に参加しようとシリアへの渡航を計画していた男子大学生(26)に対し、警視庁は2014年10月6日、任意で事情を聴くとともに東京都杉並区の宿泊先などを家宅捜索した。

   男子大学生にかけられた疑いは刑法第93条が規定する「私戦予備および陰謀の罪」。法曹関係者にとってもなじみがないという法律が適用された、極めてめずらしい事件だ。

同容疑の適用は初めて

ネットで出回っている求人広告の画像
ネットで出回っている求人広告の画像

   各紙の報道をまとめると、事情聴取を受けた男子学生は日本人でイスラム教徒。北海道大学に在籍し、現在は休学中だ。夏ごろに杉並区に引っ越し、20~30代の男性4人で共同生活をしていた。

   千代田区の古書店に貼られていた求人広告を見て、店員を通じて募集主と連絡を取り、シリア行きを計画したとみられる。なお、ネット上に出回っている求人広告には「勤務地:シリア 詳細:店番まで」とだけ書かれていて、具体的な内容は分からない。

   男子学生は当初8月中にシリアへ向かおうとしていたが、何らかのトラブルで中止。改めて今月7日の渡航を計画していたところ、警視庁から事情聴取を受けることになった。取り調べには「シリアでイスラム国に参加し、戦闘員として働くつもりだった」と話しているという。また、男子学生を取材したというフリージャーナリストの常岡浩介さんは毎日新聞や北海道新聞に対し、本気で渡航、戦闘に加わるつもりだったかは疑問だったと答えている。

   気になるのが、男子学生が容疑をかけられた「私戦予備および陰謀の罪」だ。刑法93条は、外国に対して私的に戦闘行為をする目的で、武器や資金を準備、陰謀した者について、3か月以上5年以下の禁固刑を規定している。報道によると、同容疑で捜査を受けたのは初めてだとされている。

「これが問題になる場面を見聞きした記憶はない」

   果たしてどんな法律なのか。東海地方で活動している、ある現役弁護士は「大学の講義ではほとんど説明がなかったと思います」と語る。司法試験の予備校でも勉強した記憶はなく、司法試験の択一試験の勉強で覚えた程度で、過去の適用事例や判例などもすぐには思い浮かばないという。

   あまりにもなじみが薄い法律ということもあり、法曹関係者の中にはネットで解説したり、感想を漏らしたりする人もいる。

   元検察官で弁護士の落合洋司さんは「択一試験前に勉強したことがある程度で、司法修習生から実務家になり現在に至る過程で、これが問題になる場面を見聞きしたことはありません。それくらい、適用が稀(皆無、と言っても過言ではないでしょう)な犯罪構成要件です」と自身のブログで語る。

   関西大学の永田憲史准教授は「刑法93条の部分のコンメンタール(編注:法律の解説書)、初めて読みました」としながら、ツイッターで解説をつづっている。

   現行法が「予備および陰謀」には規定がありながら、実行した者について処罰がないことについて、「理由は明確ではないようですが、私戦の実行が想定できないことが理由ではないかと述べられています」と語っている。

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