2024年 4月 20日 (土)

「辞めさせなければ、大学爆破する」 元朝日記者や大学への脅迫に批判広がる

   済州島でいわゆる従軍慰安婦が強制連行されたとする虚偽の証言「吉田証言」を朝日新聞が報じた問題が、単なる誤報にとどまらず、学問や報道の自由の問題に波及してきた。

   慰安婦報道にかかわったとされる複数の元朝日記者の再就職先の大学に、大学を辞めさせなければ「釘を混ぜたガスボンベを爆発させる」といった内容の脅迫文が届いたからだ。

「釘を入れたガス爆弾を爆発させる」

元朝日記者への脅迫に批判が広がっている(写真は東京・築地の朝日新聞東京本社)
元朝日記者への脅迫に批判が広がっている(写真は東京・築地の朝日新聞東京本社)

   攻撃の対象になっているのは、当初は吉田証言を最初に報じたとされていた清田治史氏(67)と、慰安婦のインタビュー記事を報じた植村隆氏(56)。清田氏は、14年8月5日の慰安婦問題の検証記事では吉田証言の初報を執筆したとされていたが、9月29日には「元記者(編注:清田氏)は当該記事の執筆者ではないことが分かりました」という訂正記事が掲載された。

   清田氏は帝塚山学院大学(大阪府大阪狭山市)で教授を、植村氏は北星学園大学(札幌市厚別区)で非常勤講師を務めていたが、結果として脅迫を受けた両校の対応は分かれた。

   帝塚山学院大は9月13日に、

「清田治史氏に対して多数のご意見、お問い合わせを頂戴しておりますが、同氏は9月13日を以て、本人の申し出により退職しましたことをお知らせいたします」

という内容の文書をウェブサイトに掲載。この日に同大宛てに釘入りの脅迫文が届いていたことが後に明らかになるが、大学側は脅迫文と退職の因果関係を否定している。

   10月2日に津田謹輔学長名で発表された文書には、

「現在、報道にもありますように管轄の警察署に随時報告するとともに、学内の警備強化を進めております。学生の安全確保を最優先と考え、今後とも最善の態勢整備に努めてまいります」

とあり、「釘を入れたガス爆弾を爆発させる」などと脅迫文の内容を報じた報道を大筋で認めている。

「大学を爆破する」という脅迫電話も

   北星学園大は9月30日付で「本学学生および保護者の皆様へ」と題した文書をウェブサイトに公表し、一連の経緯を説明している。それによると、キャンパス周辺でビラの配布や街宣活動が行われたほか、5月と7月には「危険な行動を示唆する悪質な脅迫状」が届いた。「大学を爆破する」という電話もあったという。

   大学側は脅迫文の詳しい内容を明らかにしていないが、植村氏を辞めさせなかった場合は「釘を混ぜたガスボンベを爆発させる」といったもののようだ。

   清田氏は帝塚山学院大を退職したのに対して、北星学園大は、

「従軍慰安婦問題ならびに植村氏の記事については本学は判断する立場にない。また、本件に関する批判の矛先が本学に向かうことは著しく不合理である」
「本学に対するあらゆる攻撃は大学の自治を侵害する卑劣な行為であり、毅然として対処する」

としている。植村氏の授業の内容が従軍慰安婦問題や植村氏の過去の記事の内容とは無関係だということもあって、今後も授業は継続して担当する予定だ。

家族にも脅迫が及んでいる深刻な事態

   北星学園大を支援する動きも広がっている。10月6日には大学教授らによる市民団体「負けるな北星!の会」が発足し、会見した法政大の山口二郎教授は、

「北星でこの動きを止めないと、わが国における学問の自由、言論の自由は本当に崩壊し始めるという危機感を持っている。その意味で、慰安婦、朝日の問題には色々な意見があるだろうが、言論の自由と学問の自由を守るという1点で色々な方が声をあげるという運動を広げていかなければならない」

と訴えた。海渡雄一弁護士は、

「娘さんが具体的に顔写真までネットにさらされて加害を告知されている状況。これは未成年の方にとっては大変な苦しみ」

と話し、家族にも脅迫が及んでいることを明かした。

   一連の脅迫に理解を示す動きは皆無といってよく、産経新聞も10月2日の社説にあたる「主張」欄で、

「朝日新聞の慰安婦報道に抗議の意味を込めた脅迫文であれば、これは言論封じのテロである。断じて許すことはできない。言論にはあくまで言論で対峙すべきだ」
「朝日新聞による一連の慰安婦報道は、日本と日本人の国益や尊厳を大きく損ねたものだ。同紙の検証や謝罪が十分なものとは、到底いうことができない。だがそのことと、暴力や威力で言論を封じようとすることは全くの別問題である」

と論じている。

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