2024年 4月 27日 (土)

高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ
「日韓首脳会談」にらんだ取引材料か? 韓国、産経前ソウル支局長を在宅起訴

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   最近、マスメディアに関わる事件が多い。ここのところ、朝日新聞に対する国内での批判が多かったが、今度は海外からびっくりするニュースが入ってきた。

   韓国の検察が、「根拠もなしに大統領の名誉を傷つけた」として産経新聞の前ソウル支局長を情報通信網法に基づく名誉毀損罪で在宅起訴したのだ。市民団体の告発を受けてのことであるが、日本の感覚から言えば、「あれっ!?」という事件である。もっとも、1993年に軍事機密漏えいで、起訴され有罪判決を受けたフジテレビ支局長の例もあるが。

国民批判をそらす意図があったといわれても仕方ないようなやり方

   今はネットの時代だ。問題とされたのは、2014年8月3日付けのウェブ上のコラムであり、本日(10月9日)現在も、読むことができる。

   これを読む限り、ネット上ではどこでもあるような内容だ。しかも、朝鮮日報コラムのほぼ孫引きである。そのコラムの日本語版も、ちょっと手続きは面倒だが読める。

   その朝鮮日報では今回の起訴について、「謝罪・反省しない産経前支局長、名誉毀損罪で在宅起訴」と報じ、起訴の理由について「加藤前支局長の記事は客観的な事実と異なり、その虚偽の事実をもって大統領の名誉を傷つけた。取材の根拠を示せなかった上、長い特派員生活で韓国の事情を分かっていながら、謝罪や反省の意思を示さなかったという点を考慮した」と報じている。

   こうした事情は、今やすぐにネットを通じて世界に伝わる。韓国政府としては、市民からの告発を奇貨として、セウォル号の事故から国民批判をそらす意図があったといわれても仕方ないようなやり方だ。

   ちょっと冷静になって考えれば、このような起訴がかえって韓国にマイナスになる、くらいは分かりそうなものだが、拳を振り上げざるを得なくなり、その拳の落としどころも苦慮したのだろう。

「ある意味で滑稽」な韓国側対応

   もっとも、外交的には、どのような案件も取引材料だ、8月のミャンマーでの日韓外相会談において、岸田外務大臣はユン・ビョンセ韓国外相に懸念を示している。

   日本は今のところ中国との首脳会談に向けて交渉しており、韓国は二の次だ。その状況で、日中会談が実現すれば、日韓会談も時間の問題だ。そうなれば、韓国側としてきっかけが必要だが、その一つとして本件を考えたとしても外交テクニックとしては、先進国流ではないものの、不思議ではない。

   それにしても、今回の事件はマスメディアとして考えるところは多いだろう。もちろん、報道の自由の侵害について声を大きくして反対しなければいけない。とともに、他のメディアを引用した上で、ほんの少しの差異(マスメディアから見れば付加価値)について、当局から起訴されたことをどう考えるのか。

   そのまま、引用だけしていれば、何もなかったのではないか。小さな付加価値のために、起訴されたとすれば、これはネタとして徹底的に使ったほうがいい。

   問題とされたウェブ上のコラムも、当時はツイート数もあまりなく、話題になったわけでない。前支局長が事情聴取を受けてから筆者は初めて見たくらいだ。そのようなウェブ上のコラムまで、韓国当局が取り上げるなど、ある意味で滑稽である。

   マスメディアは、急速に国民から信頼を失っているが、まだまだ存在感は捨てたものでない。当局からも見向きもされなくなったら、本当におしまいである。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「さらば財務省!」、「日本は財政危機ではない!」、「恐慌は日本の大チャンス」(いずれも講談社)など。


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