2024年 5月 3日 (金)

原発事故の「指定廃棄物処分場」、5県の設置難航 宮城、茨城、栃木、群馬、千葉・・・住民の反対で見通し立たず

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   東京電力福島第1原発事故で発生した指定廃棄物の処分場の設置が、事故から4年5か月たった今も難航している。

   国は福島県以外の宮城、茨城、栃木、群馬、千葉の5県に各1か所ずつ処分場を建設することになっているが、住民の反発が根強いためだ。選定方法の透明性に問題があるとの指摘もあり、見通しは全く立っていない状況だ。

  • 指定廃棄物の処分場の場所決めは今も難航
    指定廃棄物の処分場の場所決めは今も難航
  • 指定廃棄物の処分場の場所決めは今も難航

現在は12都県で公共施設や個人の畑などで分散して一時保管

   指定廃棄物は原発事故で飛散した放射性物質に汚染された稲わらやごみ焼却灰、下水汚泥などで、濃度が1キロ当たり8000ベクレルを超え、環境省が指定したもの。福島県内で中間貯蔵施設に保管し、30年以内に県外の最終処分場に移すことになっている10万ベクレル超の廃棄物とは別物だ。

   指定廃棄物は現在、12都県で公共施設や個人の畑などで分散して一時保管されているが、国は放射性物質汚染対処特措法に基づき、福島と、廃棄物が多い宮城、栃木、茨城、千葉、群馬の5県に1か所ずつ処分場を設け、各県で発生した廃棄物はその県の処分場で一元的に管理する方針を定めている。

   環境省が具体的な候補地名を挙げたのは宮城、栃木、千葉の3県だが、中でも千葉県で反対の火の手が燃え上がり、関係者にショックを与えた。

   千葉県内の処分場建設候補地選定にあたり、環境省は県内の683か所について、生活空間や水源との距離など4項目で点数化。その結果、千葉市内の2か所が最高点になり、千葉市中央区の東電千葉火力発電所がある東電所有地を候補地に決めた。

   京葉臨海工業地帯の一角にあり、敷地内の海側に建設した場合の住宅地との距離は約3キロ。東電側も受け入れ姿勢を示しているとされる。だが、他の県内候補地がどこだったのか示されなかったことなどから市議会が反発し、熊谷俊人市長も反対を表明。住民説明会を5回開いたが、理解は得られず、こう着状態に。現在は市と市議会が候補地の再検討を求め、環境省が9月までに回答することになっている段階だ。

厚さ30センチのコンクリート製保管庫で管理

   千葉市の反発には県内の指定廃棄物の0.2%しか発生していないのに、なぜ千葉市なのか、という思いがあるといわれる。

   他方、多くの指定廃棄物がたまっている自治体は気が気ではない。千葉県内の7割にあたる2600トンは柏、松戸、流山の3市で発生し、うち526トンは2012年12月から我孫子市などにある県営下水処理場に一時保管されていたが、今年3月に期限が切れ、3市は仕方なく持ち帰るはめに。

   柏市は持ち帰り分を含む494トンを北部クリーンセンターで、厚さ30センチのコンクリート製保管庫にて管理。地元住民から、このままなし崩し的に保管され続けるのを危惧する声が上がっている。

   他の4県も似たりよったり。国は2012年9月に、根回しもないまま、いきなり栃木県の処分場として矢板市の国有林、続いて茨城県で高萩市を候補地に選定して発表。地元の猛反発で住民説明会も実施できないまま白紙撤回に追い込まれた。このため、国は2013年2月、専門家による評価も踏まえて候補地を選ぶ方針を示したのが、現在の選考過程だ。

茨城と群馬では候補地の提示すらできていない

   千葉以外は、宮城県で加美町、栗原市、大和町の3か所を候補地として調査に入ったが、地元の反発でボーリングなどの本格調査には進めない状態。栃木県で塩谷町の1か所を候補としたが住民による激しい反対運動のため調査する見通しは立っていない。茨城、群馬県では、候補地の提示すらできていない。

   唯一計画が進んでいるのが福島県。突出して多い13万トンの指定廃棄物を抱えるが、環境省は、放射性セシウム濃度が1キロ当たり10万ベクレル以下のものは富岡町にある既存の民間施設に搬入する方針を示し、地元の要望に応えて、施設を国有化することも決めた結果、処理の枠組みがほぼ固まっている。ただ、他県の自治体には、福島に集約する考えもあり、福島県側が反発し、環境省に「1県1か所」の堅持を申し入れるなど、議論が収れんする気配はない。

   実は、同じ「指定廃棄物」といっても、地域により違いがある。千葉、群馬、茨城県では下水汚泥など、市町村などの公的施設で保管されているものが大半であるのに対し、宮城、栃木県は、個人などで保管する稲わらなどが半分以上を占めている。このため、風や雨よる飛散や流出も懸念される宮城、栃木県で処分場整備が急がれる一方、千葉などは「県内に複数設置し、負担を分け合うべきだ」(健関係者)との声があるなど、一律の方針を疑問視する向きもある。

   いずれにせよ、処分場はコンクリートでしっかり囲い、放射能漏れなどを厳重に監視することになり、そのデータなどの情報に住民が簡単にアクセスできるといった仕組みが大前提になる。また、万一、風評被害が起きた時の補償のあり方を、予め明確にしておく必要もあるだろう。

   こうした点は国が第一義的に責任を持つのはもちろんだが、県内を廃棄物がさまようような事態は県にとってもあるまじき事態だけに、知事が先頭に立って自治体との協議を進めるなど積極的にかかわる必要がありそうだ。

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