2024年 4月 24日 (水)

環境省が石炭火力発電建設に「待った」連発 山口に続き愛知・・・、電力会社「困った」

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   望月義夫環境相が、環境影響評価(環境アセスメント法)に基づき、発電所を所管する宮沢洋一経済産業相に対して、大型石炭火力発電所の建設計画に「待った」を連発している。二酸化炭素(CO2)の排出量が膨らみ、政府の地球温暖化対策の目標達成が困難になる、と考えているためだ。

   しかし、CO2をほぼ出さない原子力発電所が日本でほとんど稼働していない中、電力会社の戸惑いは大きい。原発なしで電力会社はいったいどうすればいいのか、「国を挙げた本音ベースの議論が必要」との指摘も出ている。

  • 環境・経産両省のせめぎ合いが続きそう
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削減目標達成が困難

   2015年6月以降、望月環境相が宮沢経産相に異を唱えた大型石炭火力発電所は2件。山口県宇部市で大阪ガス、Jパワー、宇部興産が出資する「山口宇部パワー」(山口県宇部市)が計画する「西沖の山発電所(仮称)」(総出力120万キロワット)と、中部電力が愛知県武豊町で石油火力から石炭火力への建て替えを計画する「武豊火力発電所」(同107万キロワット)だ。「西沖の山」は2025年までに60万キロワットの設備を2基稼働させる計画で、武豊火力は2018年度に着工し、2021年度の運転開始を目指す。

   望月環境相はそれだけではなく、東京ガス、出光興産、九州電力の3社が出資する「千葉袖ケ浦エナジー」が出光保有の遊休地に計画し、2020年代半ば運転開始を目指す「千葉袖ケ浦火力発電所」(同200万キロワット)も近く、同様の対応をするとみられている。

   望月環境相が宮沢経産相に「待った」を連発する背景には、こうした石炭火力発電所の建設が計画通りに進めば、日本の国際公約でもある2030年時点の温暖化ガスの削減目標達成が困難との認識がある。

   日本の温暖化ガス削減目標の前提となる2030年の電源構成(ベストミックス)では、石炭火力の割合を2013年の30%から26%に減少させることにしている。さらにこの電源構成を前提として、2030年までに温暖化ガス排出量を2013年比で26%削減するとしている。

   2030年という、それほど遠い将来ではない目標に二つの「26%」を掲げたわけだ。ざっくり言えば、各社の計画通りに大型の石炭火力発電所が次々に稼働したのでは、この二つの26%が達成できないのは確実なため「待った」をかけている、というのが環境省の立場だ。

   この「待った」、正式には環境アセスメント法に基づく「意見書」で、建設を止める強制力まではない。とはいえ、そうした意見書が出たからには、経産省・エネルギー企業としてCO2削減の具体的な対策などは求められる。

環境・経産両省のせめぎ合いが続きそう

   では、問題の石炭火力発電所とはどういうものなのか。まずは環境省サイドからの説明を聞こう。

   環境省によると、国内では33基の石炭火力の新設計画がある。すべて計画通りに進んだとすると、2030年には石炭の発電量の電源構成比が40%台半ばまで達し、7月に政府が決めた26%どころの話ではなくなってしまう可能性が高い。

   そもそも、石炭火力は発電のために使うことによるCO2の排出量が、液化天然ガス(LNG)など他の化石燃料に比べても多い。こんなものを次々に認めていれば、もう一つの「26%」のCO2削減などおぼつかない、というわけだ。

   また、世界の潮流も日本の石炭火力には逆風だ。欧州は石炭火力縮小に向けて課税を強化することで、発電所が閉鎖されるケースがすでに相次ぐ。米国でも石炭などの火力発電所から出るCO2の削減幅を引き上げる規制強化策を打ち出した。

   環境省の攻勢を受け、日本の電力会社などエネルギー企業35社は今夏、自主的なCO2削減策を公表した。2030年度の販売電力1キロワット時あたりのCO2排出量を2013年度に比べて35%減らすというものだ。ただ、各社別のノルマや達成できない場合の対応は示していないことから、実効性を早くも疑問視されている。

   とはいえ、電力会社としても、原発停止が続く中で発電効率がよく安価な石炭火力に傾斜したい、というのは営利追求企業として当然とも言える。環境相が「石炭火力をやめろ」とは言っても「CO2を出さない原発をどんどん再稼働しろ」とは言わない点も、経産省や電力業界には不満なところ。原発を含む世論の動向もにらみながらも、石炭火力を新設しようという動きを止めるのは困難で、環境・経産両省のせめぎ合いが続きそうだ。

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