2024年 5月 4日 (土)

3.2兆円も「改善」した政府の2020年財政見通し 税収が増え、歳出は抑える、なんてウマイ話信じられるのか

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「前提」そのものに首をかしげる市場関係者

   ただ、これらの前提に首をかしげる市場関係者は多い。確かに、景気回復に伴う企業の法人税納税の再開などが追い風となって2014年度の税収が想定より上振れた。15年度に入っても、税収は7月まで前年比で大幅なプラスとなっているのは事実だ。だが、「この大幅な伸びが2020年度までずっと続くとは考えにくい」(エコノミスト)。そもそも、中国経済に端を発する世界経済の混乱が現実味を帯び、成長率が下振れするリスクは高まっている。税収増の見通しは甘いと言わざるを得ない。加えて、安倍政権は法人税の実効税率を20%台に下げる本格的な検討に入った。

   2016年度の歳出の伸びが、なぜ物価上昇率の「半分」になるのかについても、「機械的に設定した」(内閣府)だけで、合理的な根拠はない。実際、16年度予算の概算要求は102兆円を超え、過去最大となった。財務省は抑え込む構えだが、来年の参院選を控え、与党からの歳出圧力は高まっている。

   大幅な赤字圧縮を演出した今回の試算は、極めて楽観的な前提に基づいて「厚化粧」を施したものといえるが、それでも政府が目指す2020年度の赤字ゼロには届いていない。安倍晋三政権は、2017年4月に予定する消費税率10%への引き上げの後の増税を封印している。赤字解消には、他の手段での税収増と、抜本的な歳出抑制が必要となる。

   政府関係者は「財政健全化計画を着実に実行すれば、黒字化の目標達成は可能」と強調するが、計画に列挙された高所得者の負担増などは「検討事項」にとどまり、改革がどれだけ実行に移されるのかは不透明だ。支持率に陰りが見えだした安倍政権が、痛みを伴う改革より、財政出動の誘惑に駆られる可能性は高く、今回の楽観的な赤字改善の試算は「砂上の楼閣」に近いものといえそうだ。

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